研究課題/領域番号 |
13J07156
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木村 勇太 東北大学, 大学院環境科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 高温イオニクス材料 / 弾性率 / 内部摩擦 / 強弾性 / 緩和過程 / 応力分布 / 機械的劣化機構 / 酸素空孔濃度 |
研究概要 |
[目的と研究実施計画] 本研究の目的は、格子欠陥が、高温イオニクス材料の機械的特性・破壊特性に与える影響を明らかにし、材料が実際にデバイスに応用された際に生じうる機械的劣化機構を明らかにすることである。その目的に基づき、当該年度では主に、温度・制御雰囲気下における高温イオニクス材料の弾性率、内部摩擦、破壊特性の評価を行う予定であった。 [研究成果・重要性] 共振法により、(La, Sr)(Co, Fe)O_3 (LSCF)の弾性率、内部摩擦を測定した。その結果、結晶構造が菱面体晶のとき、LSCFの弾性率、内部摩擦は、試料に加わる印加応力に依存することが明らかになった。菱面体晶のLSCFは強弾性体であり、ドメインの再配向により応力を緩和するため、非線形な応力―ひずみ曲線を有する。弾性率、内部摩擦の印加応力依存性は、このドメインの再配向に関係があることが示唆された。この結果は、The 19th International Conference on Solid State Ionicsにおいて発表した。LSCFを構成材料として用いた固体酸化物形燃料電池(SOFC)内の応力分布は、ドメインの再配向に起因する応力緩和の影響を受ける可能性がある。その影響を明らかにするため、動的機械分析により、LSCFの応力緩和過程を調べた。その結果から、LSCFの応力緩和過程をモデル化し、有限要素法によりSOFCモデルセルの応力分布を計算した。その結果、特に相転移温度において、顕著な応力分布の変化が起こることが示唆された。この成果は、The 13^<th> International Conference of Solid Oxide Fuel Cellsにおいて発表した。この応力分布評価手法を応用することで、SOFCの機械的劣化機構を、より正確に理解できる可能性がある。その点で、本研究の当該年度の成果は、工学的に非常に重要であるといえる。また、ドメインの再配向に起因する応力緩和過程は、試料中の酸素空孔濃度によって大きく変化することが明らかになった。酸素空孔濃度とドメインの再配向の関係性を明らかにすることも、今後の重要な課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高温イオニクス材料の弾性率・内部摩擦の評価を行い、その結果を2つの国際学会で発表することができた。また、2年目の計画を前倒しして、応力分布シミュレーションに取り掛かることができた。
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今後の研究の推進方策 |
La_2NiO_4などの格子間酸素を有する材料の機械的特性を、高温制御雰囲気下で測定し、格子間酸素が材料の機械的特性にどのような影響を及ぼすかを調べる。一軸圧縮試験装置を完成させ、高温・制御雰囲気下における高温イオニクス材料の破壊特性を評価する。均質化法を取り入れ、より実セルに近い条件で応力分布を計算する。第一原理計算を用いて、格子欠陥が機械的特性・破壊特性に与える影響を調べる。
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