研究概要 |
QEDを超えた物理に起因するアクシオンなどの未発見素粒子を探索している。これらの粒子は光子と弱く相互作用すると考えられているため、X線→未知粒子→X線と変換して探索する。本年度における主な成果は以下の通りである。 まず、2012年度に前実験としてSPring-8, BL19LXUにて行ったパラフォトン探索の結果を投稿し、[1]として掲載された。大強度X線ビームを用いた素粒子実験として、地上実験としては初となる質量領域を探索しパラフォトン・光子間の結合定数に対する制限を得た。本結果は9th Patras Workshopにおいて発表された。 また強磁場を用いてX線とアクシオンを変換する探索を行うためのダイポール型電磁石の開発も行った。本実験では、装置の小型化とエネルギー効率の向上を目的に常伝導パルス磁石を使用する。長さ20cmのGFRPボビンにCu-Ag線を巻いてテスト磁石を製作し励磁試験を行った。試験は東大物性研究所のコンデンサーバンク及びビームが出ていない時にBL19LXUに既設のコンデンサーバンクを使用し、実験ハッチにて磁場分布や発熱量を測定した。結果として約20cmの磁場領域において10T弱の磁場発生に成功した。磁石の強度改善並びに発熱に対する冷却効率の向上が今後の課題となる。またパルスの繰り返しレートを上げるための電源設計も行った。これらを組み合わせて今年度から来年度にかけて実際の未知粒子測定を行うことを予定している。パルス強磁場の技術を素粒子実験に導入することで、本実験以外にも様々な高感度探索への応用が見込まれている. [1] T. Inada et al., Phys. Lett. B 722 (2013) 301-304
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