研究課題
QEDを超えた物理に起因するアクシオンなどの未発見素粒子を探索している.これらの粒子は磁場中で光子と弱く相互作用すると考えられているため,X線→未知粒子→X線と変換して探索する.本年度における主な成果は以下の通りである。探索の鍵となるパルス電磁石については,製作を開始した前年度時点で6.9 Tであった最大磁場強度が,本年度で14.4 Tへと向上した.その際磁石の製作と試験を本実験室で一元化して開発速度を高速化する環境を整備した.探索の感度を上げるためには強度ばかりでなく磁場発生の繰り返しを高速化する必要がある.繰り返しは磁石の冷却効率で制限され,磁場発生時の発熱を冷却材である液体窒素へ効率よく逃がす構造が必要となる.発生応力の低い箇所に対する補強を軽くすることで冷却効率の改善が見られた.磁石にパルス電流を供給するバンクについては,繰り返し運転可能な低電圧型のプロトタイプ(1 kV, 1.6 mF)を製作し,磁石の性能評価に使用している.本測定ではこれを4.5 kV, 3 mFへとアップグレードする予定で,現在製作が進行している.またSPring-8 BL19においてビームタイムを取得し,上記の磁石2つとプロトタイプ電源を持ち込んでアクシオン探索のテスト測定を行った.ビームに対する磁石の位置決めなどの手順を確立して本測定への足掛かりとした.
2: おおむね順調に進展している
磁石に関しては,本研究室においてその製作(コイル巻き,外部補強,絶縁剤硬化)から性能評価(発生磁場強度,繰り返し時の発熱)に至る全工程を一括して執り行う環境の構築が完了した.これにより磁石製作のR&Dが高速化し,磁場強度に加え磁場発生効率および冷却効率に優れた磁石が概ね完了した.またそのような磁石の量産化にも成功している.磁石を運転するバンクに関しては,プロトタイプとなる低電圧仕様のものを製作し,さらに「ロスのみ充電」型へと改良して,繰り返し運転の高速化が達成された.
現在はバンクのアップグレードが進行中で,次年度前半に完了する予定である.複数の磁石とアップグレードされた電源を用いて次年度に長期測定を行う予定であり,現在その準備が進行している.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
Physics Letters B
巻: 732 ページ: 356-359
10.1016/j.physletb.2014.03.054
日本放射光学会誌
巻: 27 ページ: 204-209