創傷被覆ゲルは治療促進のために交換時に患部から剥がれ易いことが望まれ、かつ創傷面の保護、表皮細胞の移動を促進することが望まれている。ゲル機能の効率を上げるために刺激を認識する応答性が不可欠なことである。そこで、強度の制御を可能にするために架橋密度を変化でき、かつ分子内包機能を兼ね備えた新規ハイドロゲルの分子設計を提案し、研究を行った。 本研究では生体適合性ポリトリメチレンカーボネート(PTMC)を駆動力とする高分子を設計した。両親媒性グラフトポリマーに注目し、マクロモノマー法によってPTMC導入ポリマーを創製した。このポリマーの溶液、表面、バルク特性を評価した。 PTMCが形成する疎水場を評価するために温度応答性コロイドを調製した。会合体はPTMC鎖の導入により疎水性分子を内包、かつ38°Cの温度領域下で可逆的にコロイドが解離-凝集の挙動を示した。PTMCを導入することにより会合体が安定化し、凝集の抑制につながった。これは温度応答型薬物担持体としての応用が期待される。次に親水鎖と疎水鎖を導入したグラフトポリマーから創製された薄膜を水接触角測定を行うことで、数秒で疎水性領域から親水性領域に表面の濡れ性が変化し、親水性領域を広くカバーできることを見出した。このことから、生体での表面改質剤としての応用が期待される。最後にグラフトゲルを設計、創製した。これによって化学的な刺激に応答して膨潤-収縮挙動を示し、PTMCの導入により膨潤率や多孔質性を制御したゲルを創製できた。極性の異なる複数のモデル分子を用いてゲルの分子取り込み能を検討した結果、分子を選択的かつ能動的に取り込むことが明らかとなった。このゲルは薬物担体として応用が期待される。 以上のことから、PTMCを基軸にポリマー設計し多様な材料形態において多角的に評価を行うことで創傷被覆材に適した機能を発現することを明らかにした。
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