研究課題
研究代表者は、骨細胞の基質ミネラル調整に関する機構の解析を目的として、以下の研究を実施した。(1)骨細胞から発するFGF23-klotho作用は腎臓だけでなく、骨組織にもフィードバックされて、一度形成された骨基質の石灰化ミネラルの維持・流出入を調節する可能性を推察している。そこで高リン・高カルシウム血症を呈するklotho遺伝子欠損マウスの骨組織を解析したところ、骨小腔内に石灰化を誘導するような所見が得られた。このことは骨細胞が血清リン・カルシウム濃度を感知して骨基質ミネラルとして沈着する可能性を示唆している。すなわちFGF23-klotho軸の骨細胞における局在作用が推察された。(2)骨細胞はFGF23を産生・分泌することだけでなく、副甲状腺ホルモン(PTH)投与により骨細胞周囲の骨基質を溶解(骨細胞性骨溶解)することで骨基質ミネラルを調整する可能性が示唆されている。そこで、野生型マウスおよび破骨細胞が存在しないRANKL^-/-マウスで、腎動静脈を結紮し、血中カルシウム濃度を測定すると、PTH投与1時間後で血中Ca濃度が有意に上昇した。また、規則的な骨細管系を示す皮質骨の骨細胞で、骨小腔周囲に未石灰化基質が認められ、透過型電子顕微鏡にて観察を行うと、骨小腔壁は粗造となり、拡大した骨小腔内部にはコラーゲン線維が分解されたと思われる不定形構造物や、断片的な石灰化物が観察された。また、骨細胞はPTH投与の際に、破骨細胞とは異なるサブユニットからなるプロトンポンプによって周囲の骨基質ミネラルを脱灰していると考えられる。加えて、原子間力顕微鏡によるナノインデンテーションを行うと、PTHを投与すると、骨細胞周囲の骨基質ミネラルが完全に脱灰されていなくとも、弾性率は低下し、物理的に脆弱化していることが明らかになった。また、カルセインを投与すると骨小腔周囲にカルセイン標識が認められることから、骨細胞は破骨細胞の有無に関わらず、基質の溶解だけでなく、再石灰化を行う可能性が示された。
1: 当初の計画以上に進展している
研究代表者は組織化学的解析、透過型電子顕微鏡および蛍光顕微鏡観察だけでなく、原子間力顕微鏡によるナノインデンテーションなど、様々な手法を用いて研究目的を達成するべく努力をしており、現在のところ良好な結果を得ているため。
骨細胞が産生・分泌している酸の特定、骨小腔周囲の石灰化を示すためにカルセイン標識だけでなく、安定同位体であるCa44およびCa42を給餌し、同位体顕微鏡を用いて観察し、骨小腔周囲へのCaの沈着を検索する。さらに授乳期の母マウスにおける骨細胞性骨溶解の可能性や、力学的付加によってPTHの作用が増大する可能性が指摘されていることから、順次検索を行う予定である。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (12件)
THE BONE
巻: 28(1) ページ: 7-12
Histology and Histopathol
巻: 28(1) ページ: 327-335
Bone
巻: 57(1) ページ: 206-219
10.1016/j.bone.2013.08.008.
Journal of Oral Biosciences
巻: 55(1) ページ: 10-15
Hokkaido Journal of Dental Science
巻: 34(1) ページ: 2-10
Biomedical Research
巻: 34(3) ページ: 119-128
巻: 34(3) ページ: 153-159
Histology and Histopathology
巻: (印刷中)
Journal of Molecular Histology