研究課題
研究代表者は、骨細胞の基質ミネラル調整に関する機構の解析を目的として、以下の研究を実施した。骨細胞はFGF23を産生・分泌するだけでなく、副甲状腺ホルモン(PTH)投与により骨細胞周囲の骨基質を溶解(骨細胞性骨溶解)することで骨基質ミネラルを調整する可能性が示唆されている。そこで、野生型マウスおよび破骨細胞が存在しないRANKL-/-マウスの皮質骨の骨細胞を観察すると、骨小腔周囲に未石灰化骨基質が認められ、透過型電子顕微鏡にて観察を行うと、骨小腔壁は粗造となり、拡大した骨小腔内部にはコラーゲン線維が分解されたと思われる不定形構造物や、断片的な石灰化物が観察された。原子間力顕微鏡によるnanoindentationを行うと、PTHを投与すると、骨細胞周囲の骨基質ミネラルが完全に脱灰されていなくとも、弾性率は低下し、物理的に脆弱化していることが明らかになった。また、カルセインを投与すると骨小腔周囲にカルセイン標識が認められることから、骨細胞は破骨細胞の有無に関わらず、基質の溶解だけでなく、再石灰化を行う可能性が示された。さらに別の実験系として、授乳期のマウスでも骨細胞性骨溶解が見られることが指摘されているため、その現象の有無を検討した。出産直後からCa欠乏食を給餌すると、Ca欠乏食給餌36~48時間後には血中Ca濃度が有意に低下した。そのような皮質骨の骨細胞を観察すると、骨小腔周囲に未石灰化骨基質が認められ、さらに透過型電子顕微鏡で観察すると骨小腔壁は鋸歯状を呈し、骨小腔内部にはコラーゲン線維が分解されたと思われる不定形構造物が観察された。またカルシウム欠乏食を3日間与えた後、普通食に切り替え6日後に固定すると、骨小腔と骨細管に一致してカルセイン標識が観察された。以上の事から、骨細胞は血中のCa濃度に応じて骨基質を溶解・添加することが強く示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
研究代表者は組織化学的解析、透過型電子顕微鏡・蛍光顕微鏡・共焦点レーザー顕微鏡観察、さらに原子間力顕微鏡によるナノインデンテーションなど、様々な手法を精力的に用い、現在のところ良好な結果を得ている。さらに国内での学会発表だけでなく、国際学会でも発表やセミナーを行い、研究結果に対して多くの関心を得られている。
骨小腔周囲のミネラルの沈着の可能性について、カルセイン標識だけでなく、安定同位体であるCa44およびCa42を給餌し、PTH投与マウスおよび授乳期マウスで骨小腔周囲にCaの添加が認められないか検索を行う予定でる。
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Hokkaido Journal of Dental Science
巻: 未定 ページ: 未定
Histochemistry and Cell Biology
巻: 142 ページ: 489-496
10.1007/s00418-014-1230-1