研究課題
これまでに、骨細胞・骨細管系は骨幹端の骨梁よりも、成熟骨である皮質骨で規則的な配列を示し、メカニカルストレスの感知などを行うことを報告してきた。骨細胞はリンの再吸収を抑制するFGF23の産生・分泌するだけでなく、副甲状腺ホルモン(PTH)投与により骨細胞周囲の骨基質を溶解(骨細胞性骨溶解)することで骨基質ミネラルを調整する可能性が示唆されている。さらに近年、授乳期において乳汁へ多量の血清Caが移行することから母マウスが低カルシウム血症に陥ることがあり、そのようなマウスの皮質骨で骨細胞性骨溶解が起こることが報告されているが、その一方で否定する声もきかれる。そこで①生後11週齢の雄性野生型マウスにhuman PTH:80µg/kgの濃度で外頸静脈から直接投与したPTH投与マウス、および②出産直後からCa欠乏食を12、24、36、48時間給餌した授乳期マウスを用いて、血中カルシウム濃度の測定、免疫組織化学(プロトンポンプサブユニットd2、プロトンポンプサブユニットa3、FGF23)、准超薄切片観察、透過型顕微鏡観察、原子間力顕微鏡によるナノインデンテーション、カルセイン標識による蛍光顕微鏡観察および共焦点レーザ顕微鏡観察、44・42Ca安定同位元素を用いた同位体顕微鏡観察を行った。その結果、①および②どちらの実験系でも、骨小腔周囲の骨基質がわずかに溶解し、骨小腔は拡大し、拡大した骨小腔内部にはコラーゲン線維が分解されたと思われる不定形構造物と断片的な石灰化物が見られた。また、カルセイン標識および44・42Ca安定同位元素を用いた同位体顕微鏡観察により、骨小腔周囲にカルシウムの沈着が認められた。以上より、骨細胞は血中Ca濃度によって一過性に周囲の骨基質の溶解・沈着を行うことが示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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