研究課題/領域番号 |
13J07191
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
金澤 賢司 千葉大学, 融合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | エレクトロクロミズム / フォトルミネッセンス / エネルギー移動 / ビオロゲン誘導体 / 希土類錯体 |
研究概要 |
本研究は、電気化学反応による光励起エネルギー移動反応を制御することで反射・発光表示を自由に切り替え可能なデュアルモードディスプレイ(DMD)材料の開発を目指す研究である。 DMDは直流電圧印加によって可逆な色調変化を示すエレクトロクロミック(EC)材料と紫外光照射によりフォトルミネッセンス(肌)を示すPL材料の組み合わせによって、着色と発光色を自由に設定することが可能である。これまでPL材料として希土類錯体であるユーロピウム錯体、EC材料としてビオロゲン誘導体を単一素子内に混合させ、ビオロゲン誘導体のEC反応により、ユーロピウム錯体の赤色発光が制御可能であることを明らかにしてきた。しかしながら、DMD素子の反射・発光表示応答性は10秒程度であり、繰り返し安定性は1,500回程度確認したものの、実用化に向け、更なる特性向上が必要である。本研究では、新規機能性材料導入により、これら課題の達成(応答性1秒以内、耐久性1万回以上)を目指した。これら素子特性の実現に向け、発光材料とEC材料が近接しており、スムーズなエネルギー移動を実現すること、EC材料が安定的に酸化還元反応を繰り返すこと、迅速な酸化還元反応のためにこれらの材料が電極上に固定化されていることが求められる。 本年度は、DMD素子の構成や材料設計について検討を行った。具体的には、酸化チタン膜上に化学結合によってECおよびPL材料を固定し、EC分子自体の拡散や分子間での電荷移動を防ぐことで、応答性および耐久性の改善を目的とした。上記修飾電極作製に向け、まずリン酸基を有するビオロゲン誘導体およびユーロピウム錯体を合成した。実際にこれら分子を同電極上への固定化を試み、固定化されていることを赤外吸収スペクトル、吸収スペクトル測定から明らかとした。また同電極はEC材料のEC反応により発光制御が可能であることも、合わせて明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの課題である反射・発光応答性および耐久性改善に向け、研究計画に基づき研究を行った。具体的には、素子の着消色を示すEC材料と発光を示すPL材料を単一電極上に化学修飾により固定しEC分子自体の拡散や分子間での電荷移動を防ぐことで反射・発光応答性および耐久性が改善できる。実際に上記電極を作製し、EC材料のEC反応によりPL材料の発光制御が可能であることが明らかとなった。従って、本研究の達成度は、おおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、同一電極上にEC材料とPL材料を化学修飾により固定し、この修飾電極がEC材料のEC反応により発光制御が可能であることが明らかとなった。この結果を受け、実際にこの修飾電極に対する対極反応電極として、繰り返し着消色耐久性を有することが知られているプルシアンブルー修飾電極を用い、DMD素子を作製し、反射・発光表示応答性および耐久性について検討を行う。
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