研究実績の概要 |
本研究は、電気化学反応による光励起エネルギー移動反応を制御することで反射・発光表示を自由に切り替え可能なデュアルモードディスプレイ(DMD)材料の開発を目指す研究である。 DMDは直流電圧印加によって可逆な色調変化を示すエレクトロクロミック(EC)材料と紫外光照射によりフォトルミネッセンス(PL)を示すPL材料の組み合わせによって、着色と発光色を自由に設定することが可能である。これまでPL材料として希土類錯体であるユーロピウム錯体、EC材料としてビオロゲン誘導体を単一素子内に混合させ、ビオロゲン誘導体のEC反応により、ユーロピウム錯体の発光が制御可能であることを明らかにしてきた。しかしながら、DMD素子の反射・発光表示応答性は10秒程度であり、繰り返し安定性は1,500回程度確認したものの、実用化に向け、更なる特性向上が必要であった。 本研究では、新規機能性材料導入により、これら課題の達成(応答性1秒以内、、耐久性1万回)を目指した。これら素子特性の実現に向け、発光材料とEC材料が近接しており、スムーズなエネルギー移動を実現すること、EC材料が安定的に酸化還元反応を繰り返すことが求められる。前年度は、酸化チタン膜上に化学結合によってEC分子であるビオロゲンとPL分子であるユーロピウム錯体の固定化に成功した。 本年度は、昨年度固定化に成功した修飾電極のエレクトロクロミズムによるユーロピウム錯体の発光制御メカニズムの解明および素子特性の検討を行った。その結果、ユーロピウムの発光制御は、酸化チタンとユーロピウム間の光誘起電子移動に伴うことが明らかとなった。また、ユーロピウム錯体存在下においても、ビオロゲンのエレクトロクロミズムおよびユーロピウム錯体の発光が得られることも明らかとなった。本修飾電極は、発消色および発光スイッチングが2秒、さらに元の発光強度に戻るのに3秒程で完了することがわかった。
|