研究課題/領域番号 |
13J07194
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
浜下 大輔 東京工業大学, 大学院理工学研究科(工学系), 特別研究員(DC2)
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キーワード | 結晶Si太陽電池 / p型ナノ結晶3C-Sic : H / バンドオフセット / シミュレーション |
研究概要 |
前年度までに、新規窓総材料であるp型ナノ結晶3c-SiC : H薄膜の作製に成功しており、太陽電池のエミッタとして適用することで、変換効率17.0%を達成している。しかし、この材料は既存の材料と比べてバンドギャップが大きいことから、太陽電池へ応用すると界面でのバンドオフセットにより少数キャリアである正孔の輸送を妨げ、開放電圧及び曲線因子を制限している恐れがある。 そこで本年度は、p型ナノ結晶3C-SiC : Hエミッタを用いたヘテロ接合n型結晶Si太陽電池における詳細なデバイスシミュレーションモデルを構築し、太陽電池特性を制限する要因を探ることを目標とした。具体的には、シリコン基板表面及び裏面に存在する界面欠陥を考慮したモデルを構築し、デバイスシミュレーションを実施した。その結果、p型ナノ結晶3C-SiC : Hのキャリア濃度及びi-a-Si_<1-x>C_x : Hパッシベーション膜のバンドギャップが、p/n界面における内部電界及び価電子帯側バンドオフセットにそれぞれ影響し、少数キャリアである正孔の輸送に決定的な影響を及ぼすことが判明した。また、高い曲線因子を保つためには、p型ナノ結晶3C-SiC : Hにおいてはキャリア濃度を2×10^<19>cm^<-3>以上、i-a-Si_<1-x>C_x : Hパッシベーション膜においてはバンドギャップを1.93eV以下、膜厚を4nm以下にすることが必要であることを示した。上記の結果は、高効率n型ヘテロ接合結晶Si太陽電池の実現において、p型ナノ結晶3C-SiC : Hエミッタ及びi-a-Si_<1-x>C_x : Hパッシベーション膜に必要な物性値を示した世界初の成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
p型ナノ結晶3C-Sic : Hを用いた新規構造にて詳細なシミュレーションモデルを構築することで、変換効率の制限要因を特定することができたが、実際のデバイスにおいては変換効率の大幅な更新が出来ていないため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでp型ナノ結晶3c-SiC : Hエミッタにおいては、その電気的・光学的特性を十分に高めることに成功している。今後は、パッシベーション膜であるi-a-Si_<1-x>C_x : H膜の高品質化を果たすことで、結晶Si基板の界面特性を更に向上させていく必要がある。また既存のp型a-Si : Hエミッタでは問題視されなかった、p型ナノ結晶3C-SiC : Hエミッタと透明導電膜(ITO)の界面についても新たに考慮する必要がある。そのため、次年度は新たな透明導電膜の使用も視野に入れて実験を行う予定である。
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