研究課題/領域番号 |
13J07246
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
川本 智史 東京外国語大学, 総合国際学研究院, 特別研究員(PD) (10748669)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | オスマン朝 / トルコ / イスタンブル / ブルサ / 街区 / 住民構成 |
研究実績の概要 |
本年度は、オスマン朝下交易都市として繁栄したブルサのマハッレ(街区)構造と住民構成の分析を行い、また昨年度より引き続いて首都イスタンブルの都市構造の分析を行った。 15世紀後半のブルサに関しては、シャリーア法廷台帳・租税台帳・遺産目録など歴史研究を行う上で、同時代オスマン朝の他都市に比べて非常に恵まれた史料群が残存している。そこで本年度はトルコ共和国に二度の出張を行い、ISAM(イスラーム研究センター)やトルコ共和国首相府文書館で上記史料の調査および複写を行った。この過程で、当時のブルサでは徴税対象となる住民が大きく「家持」と「借家人」に二分されていたことが判明した。さらに16世紀前半までに作成された遺産目録は、ブルサのムスリム住民が死亡した際には貧富の区別なく悉皆的に作成される、都市史研究を行う上で極めて史料価値の高いものであることが分析の結果から判明し、今後研究を進める上で定量的な分析を行う基礎的史料となりうることも明らかとなった。今までにわかっただけでも、15世紀末のブルサのムスリム住民の約4割が非ムスリムからの改宗者としてのバックグラウンドを有していたこと、また生前から自邸を宗教的寄進制度(ワクフ)を用いて寄進した「借家人」が一定度存在していたことがあげられる。 また5月から6月にかけて行った出張では、イタリアのヴェネツィアに滞在し、ヴェネツィア国家文書館に所蔵されるオスマン朝関連の外交文書の調査および閲覧を行った。15世紀末から16世紀にかけてヴェネツィア共和国の貴族だったサヌードが編纂した浩瀚な史料群は、オスマン史研究でも第一級の史料であるが、今回の調査によりサヌードが用いなかったオスマン朝に関する外交文書を発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文書館での史料調査は順調に進み、現在その内容の分析を行っている。おおむね研究は順調に進展しているが、論文執筆など成果の発表に向けた準備がさらに必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はブルサに関する裁判文書と遺産目録、租税台帳の分析を進め、都市街区と住民、不動産所有の実態についての考察を行う。またここから得られた知見を用い、イスタンブル郊外のユスキュダルの街区についても同様に分析を行う。加えて旧首都のエディルネについても考察を行い、上述のオスマン朝の三都を複合的に分析する研究とする。その結果、前近代オスマン朝の首都と首都空間、住民の関係性を明らかとする。
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