本研究の目的は以下の通りである。 1. 国際産業連関理論と応用数学の分野で近年急速に発展している非負行列因子分解理論を融合することによって、各国の産業間生産連鎖構造から炭素クラスターを検出する方法の開発を試みる。 2. 1.の産業クラスター分析法と多地域型単位構造モデルを組み合わせ、国際サプライチェーンを通したCO2誘発構造から炭素クラスターを検出する方法の開発を行う。 3. 1.の実証分析として、アジア経済研究所作成のアジア国際産業連関表と国立環境研究所作成の国別部門別CO2排出量を用い、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、中国、台湾、韓国、日本、アメリカの10カ国、76産業部門を研究対象とし、当該国において検出された炭素クラスターが他国の炭素粗放的な産業クラスターに移行(変化)による環境影響を分析する。 4. 2.の実証分析として、多地域型単位構造モデルによって推計できる国際的なCO2誘発行列を用いたクラスター分析を行うことによって、特に東アジア経済における排出集約度の高いクラスターの検出とその特徴分析を行い、日本のようなAnnex I諸国と中国をはじめとするNon-Annex I諸国の間の国際的なCO2排出責任論について定量的に議論する。 国際産業サプライチェーンのクラスター分析のための事前研究として、国内産業起源CO2排出量のシステム境界決定問題について分析した。本分析の関連する結果は、2014年開催のEcoBalance 2014、The International Input-Output Associationにて報告した。また本研究成果は、英語論文として取り纏め、Journal of Economic Structures誌に投稿中である。
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