研究課題
ファイトプラズマは、世界的に大きな被害を出している植物病原細菌であり、有効な防除法の開発が切望されている。また、その病徴が特徴的であり、特に花では、花器官が葉に変化する「葉化」や花器官がシュート構造に転換する「つき抜け」など形態異常を伴うユニークな病徴を引き起こすという特徴がある。ファイトプラズマ病の防除対策や葉化植物の園芸的応用を行うためには、病原体側の『葉化因子』を明らかにすることが必要不可欠である。以上の背景を踏まえ本研究では、ファイトプラズマの葉化因子の特定から病徴発現に至るまでの分子メカニズムを網羅的に解明することを目的としている。今年度は、ファイトプラズマのゲノムから『葉化因子』の探索を試みた。複数のファイトプラズマゲノム情報を解析し、その比較解析から『葉化因子』候補遺伝子を抽出した. それら候補遺伝子をモデル植物であるシロイヌナズナにそれぞれ形質転換して表現型の観察を行ったところ、花器官の形態が異常になり、葉様の組織に変化するラインを得ることに成功した。このラインに導入された遺伝子以外では、形質転換体で花器官の異常が観察されるものがなかったため、その遺伝子を『葉化因子』としてさらに研究を進めた。葉化因子の過剰発現体において、花器官の形成に関わる遺伝子発現がどのように影響を受けるのかを調べるために、RNAを抽出し、リアルタイムPCR法を行った。また、ファイトプラズマ感染植物においても同様に試験しその結果を比較したところ、共にMADSドメイン転写因子が影響を受けることを明らかにした。来年度以降も引き続き葉化因子に関する解析を進め、葉化因子が病徴を発現させるメカニズムを詳細に解明していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
今年度の実験計画では、「葉化因子のスクリーニング」を予定していたが、おおむね計画通りに実験を遂行でき、葉化因子を特定するところまで達成できたため、おおむね順調に進展していると判断した。
今後は、葉化因子がどのように葉化症状を誘導するのかをより詳細に解析し、その全体像に迫りたいと考えている。具体的には、当初の研究計画通り、葉化因子の植物内動態や、葉化に至る迄の植物内シグナルネットワークの解明を推し進め、育種素材への展開につながる知見を得る予定である。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Scientific Reports
巻: 4:4111 ページ: 1-7
10.1038/srepO4111
Journal of General Plant Pathology
巻: 80 ページ: 176-183
10.1007/s10327-014-0504-8
Plant Physiology
巻: 162 ページ: 2005-2014
10.1104/pp.113.218586