研究課題/領域番号 |
13J07294
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
片宗 優貴 九州大学, 総合理工学府, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 超ナノ微結晶ダイヤモンド / ヘテロ接合 / p型半導体 / ホウ素ドーピング / 受光素子 |
研究実績の概要 |
平成26年度での研究は,超ナノ微結晶ダイヤモンド/水素化アモルファスカーボン混相(UNCD/a-C:H)膜へのホウ素,窒素ドープ膜それぞれの光電気物性と膜構造との相関を明らかにすることを目的とした.前年度に引き続きUNCD/a-C:H膜におけるキャリア伝導機構を探るため,ホウ素ドープ膜に関して,電気特性に大きな影響を及ぼす水素化の影響を検証した. 膜作製時の水素雰囲気圧力により水素含有量の調整が可能であることを確認した上で,電気特性と膜構造の評価を行った.非水素化膜は室温で約1000 S/cmの高い電気伝導度を持つ半金属的ふるまいを示す一方で,水素化膜はHopping伝導が優勢な半導体的ふるまいを示すことが明らかとなった.この起源を探るため,水素化と欠陥構造に付随する不対電子の観測を試みたが,電気伝導度の関係上ESR信号の取得が困難であり議論するまでには至っていない.これに対してNEXAFS測定による局所的な炭素の化学結合状態の評価では,非水素化膜はsp2結合に由来する特有のPI*軌道が観測された.このsp2結合がバンドギャップ間に局在準位を形成して半金属的な伝導を誘起しているものと考察している.水素が持つ(i)原子状水素による炭素sp2相の選択エッチングおよび(ii)炭素原子の終端効果によって,sp2結合由来の局在準位形成が抑制され,ホウ素が形成する局在準位を介したHopping伝導が優勢になると考えられる. また,硬X線を用いた光電子分光法によりB, Nドーピングによるキャリア密度の変化の膜内部の電子状態の観測を試みた.Bドープ膜ではドープ量の増加に伴ってFermi準位が価電子帯側に近づき,Nドープ膜では対照的にFermi準位から遠ざかる傾向が観測された.詳細は解析中であるが,これら結果はp,n型化にそれぞれ対応しており,単膜での電子状態の初めて観測することができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
UNCD/a-C:H膜では,主成分C,不純物B, N,Hおよび構造欠陥が複合的に作用し合っているためその電気物性の理解は困難であったが,不純物B, Nに加えて水素化の効果が明らかになったことで,p, n型層としてのUNCD/a-C:H膜の電気特性の全容がわかりつつある.これら結果は今後のpn接合設計において重要な成果の一つであると考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
p, n型UNCD/a-C:H膜でのキャリアの伝導モデル確立を目指すとともに,UNCD/a-C:H膜とSiとのヘテロ接合でのダイオード特性およびその接合界面におけるキャリア輸送と電子状態の変化との関係を探ることで光電変換層としての光電気物性の詳細を明らかにする.
|
備考 |
http://yoshitake.private.coocan.jp/univ_lab/index-j.htm
|