研究課題/領域番号 |
13J07314
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
清田 恭平 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レアアースフリー / SRモータ / 電気機器学 |
研究実績の概要 |
本年度は,風損および風切り音防止を目標とした円筒型回転子の中速回転時における風損・風切り音の軽減の実験検証および考察を行った。 実機試験では、実験装置の都合により7500 r/min以下の回転数にて実験を行った。風損に関しては、無負荷時トルクの回転速度による変化が、従来の回転子より小さいことを確認し、風損軽減効果を実証した。ただし、ベアリングの差による機械損の増加が確認された。また、無負荷時の騒音測定の結果、7050 r/minにて最大11.4 dBの騒音低下が確認された。同時に4500 r/min以上の領域で騒音の減少が確認され、風切り音の軽減を実証した。ただし、実負荷試験の結果、測定時の鉄損が解析時より大幅に増加していた。従来型回転子と比較すると解析時からの増加幅は2倍以上であった。これは、1.試作時の鉄心加工法の違い、2.回転子端部のエンドコアによる渦電流、3.回転子積厚の増加、以上の三要因が考えられる。 また、実機試験前に測定した、非対向時における巻線の鎖交磁束―電流特性の測定結果にヒステリシスが確認された。この測定結果の考察のために、鉄心材料のB-H特性にヒステリシスや鉄心材料内の渦電流を考慮した解析を実施した。解析の結果、極間に設置されたリブに極度の飽和が発生することにより巻線電流が0となった状況においても残留磁化が発生し、それにより巻線の鎖交磁束-電流特性の解析結果に実機試験と同様の傾向が表れた。ただし、ヒステリシスの大きさは小さい。実機試験では渦電流による損失が発生している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SRモータの、ハイブリッド自動車駆動用モータ用途への適用には、出力・トルク密度、効率、振動・騒音、駆動回路の4つの課題がある。本年度は、必要事項のうち、効率や騒音に関する課題について、高速領域における対策方法を検討した。本研究では、回転子の円筒形状化を提案し、その結果、高速領域、無負荷の領域において、騒音低減と高効率化の両立が可能となった。これは、SRモータのハイブリッド自動車駆動用モータへの適用に向けて大きな進歩である。 しかし、円筒形状化により、若干ではあるが低速領域の効率低下が新たに発生した。ハイブリッド自動車駆動用モータの多様点は低速領域にあり、高速領域の騒音低減・高効率化と両立させる必要があり、対策を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
はじめに、より低速領域の効率低下幅が小さい円筒形状型回転子の設計を行い、高速領域における効率の向上や騒音軽減効果を確認する。具体的には、円筒形状型回転子の極間に存在するリブのオフセット幅を変更することにより低速領域の効率低下と高速領域における無負荷損失削減との両立を図る。 その後、SRモータの巻線直列数の変更による効率の変化を確認する。上記の円筒形状モータと最適な巻き線直列数を検討する。 同時に、目標IPMモータや従来設計のSRモータの電流通電時の温度測定により、許容可能な電流密度の検討を行う。SRモータは回転子が鉄心のみで構成させているため、SRモータにおける温度制約条件は固定子側に存在する巻線の耐熱温度が支配的である。また、最大出力となる時間は短時間である。このため、温度測定により電流密度と温度上昇の関係を確認し、この結果から巻線の直列数・並列数を変更する。
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