本研究は、日韓国交正常化以後の日本の対韓国外交を対象とし、当該政策決定過程を規定した諸要因の構造的な連関に着眼してその動態の機制を解明することを目的としている。平成26年度においては、主に次の三点に取り組んだ。 第一に、論文の公刊に向けた資料の収集、分析作業の継続である。とりわけ年度前半期において六本木の外交史料館に通い、関連する日本の外交文書を収集、分析した。11月末には、これらの作業を基に「米中関係の変容と日本の朝鮮半島外交(1969-1973)」と題した研究発表を行い、論文公刊に向けて有意な助言を得た。 第二に、博士論文の分析枠組を次のように洗練させた。対米国政策上の考慮と朝鮮半島秩序をめぐる考慮の相互作用が日本の対韓国外交を強く規定した、というのが基本的な分析視角である。まず前者の側面を捉えるために、日本の朝鮮半島外交をめぐる日米の相互作用を分析する。次に後者の側面を捉えるために、その時々で志向された朝鮮半島秩序像を解明する。以上の検討を踏まえ、両側面の相互作用の態様を解明する。 第三に、研究の対外発信に向けた取り組みである。2014年3月に学会誌『国際政治』に掲載された拙稿「日米関係における対韓国支援問題、一九七七―一九八一年」が日本国際政治学会の第七回学会奨励賞受賞論文として選定されたことから、当該論文を海外の電子ジャーナル(World Political Science Review)にて公刊する機会を得た。そこで、2015年2月半ば以降は当該論文の英訳作業に精力的に取り組んだ。当該論文は、2015年度中に掲載の予定である。 なお、当初検討していた海外での資料調査は、資料集の公刊状況の改善に鑑みて取り止め、それに代えて二次資料の徹底的な収集に注力した。
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