研究課題/領域番号 |
13J07368
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
信田 尚毅 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | バイポーラ電極 / 表面開始重合 / ポリマーブラシ / 傾斜材料 / 表面修飾 / 電解反応 / 精密重合 |
研究概要 |
電源に接続された駆動陽陰極間に導体を設置すると、導体は分極し、同一平面内に陽極と陰極、言い換えれば電位勾配を有する「バイポーラ電極」として振る舞う。本研究は、バイポーラ電極上の精密に制御された電位勾配を基板表面へ転写することで、生化学分野での応用が期待される傾斜ポリマーブラシの作成を目的とする。 初めに、アリールジアゾニウム塩の一電子電解還元による電極表面修飾を鍵反応とし、基板表面への機能団の傾斜的導入を検討した。ジアゾニウム塩に由来するフェネチルアルコールの傾斜的導入の後、2-bromisobutylyl bromideを用いてアルコールをアシル化し、原子移動ラジカル重合(ATRP)の開始剤に変換した。重合開始剤の傾斜的導入はX線光電子分光(XPS)解析により確認した。興味深いことに、重合開始剤の密度勾配は、バイポーラ電解に際に外部より印加される電圧、または電解時間に依存して変化することが明らかとなり、バイポーラ電解を用いることで精密に制御された機能性傾斜表面を作成可能であることが示唆された。続いて作成した基板を用い、メタクリル酸メチル(㎜)をモノマーとして表面開始ATRPを行った。得られたポリマーブラシについて赤外分光分析を行ったところ、前述のXPS解析結果と同様、ポリマーブラシが密度勾配を有していることが示された。すなわち、バイポーラ電解によって作成された重合開始剤の密度勾配が、ポリマーブラシに反映されていることが示唆された。更に、得られたポリマーブラシの膜厚測定から、グラフト密度が高い程膜厚が大きくなっており、ポリマーブラシが3次元的な傾斜形状を示していることが明らかとなった。 本成果は新しい傾斜ポリマーブラシ創成法の提案に留まらず、様々な機能性傾斜表面作成のプラットフォームとしての利用が可能であり、今後の発展が多いに期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請当初の電解発生触媒を用いた原子移動ラジカル重合、というアプローチとは異なっているが、目的とした傾斜ポリマーブラシの創成は達成した。また、傾斜ポリマーブラシに関する一・連の評価方法は本年度の研究を通して確立することができたため、来年度以降の研究が益々進展すると期待される。更に電解発生触媒を用いた重合系の最適化も最近達成しており、本年度は研究計画通りに、おおむね順調に研究が進展したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
「11、現在までの達成度」で述べたとおり、電解発生触媒を用いた傾斜ポリマーブラシの作成に成功したため、本系についてより詳細に検討していきたい。また、当初の研究計画に従い、次年度は共役系傾斜ポリマーブラシの作成も同時に推進する予定である。
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