研究実績の概要 |
ポリヒドロキシアルカン酸 (PHA) は糖や植物油、脂肪酸といったバイオマス資源から微生物合成可能な高分子材料で、熱可塑性や生分解性などの特徴を有するため、環境調和型プラスチック材料や医用材料としての利用が期待されている。申請者はPHA顆粒結合タンパク質(フェイシン、PhaP)がある種のPHA重合酵素を活性化可能であることを見出し、その活性化機構解析とPHA高生産化への応用を行った。 細胞外(in vitro)実験により、重合酵素活性化がPhaP濃度依存的な効果であること、アミノ酸配列や分子量が大きく異なる他の微生物由来のPhaPでも活性化が可能であること、重合能活性化と共に重合酵素の基質特異性も変化することが見出された。また、上記の活性化機構に関して、種々のin vitro実験結果などに基づき推定される活性化機構を提案した。 上記の重合酵素活性化効果が細胞内(in vivo)でも生じるかという点を、組換え大腸菌を用いたin vivo PHA生産系で評価したところ、PhaPを導入したin vivo PHA生産系ではPhaP濃度依存的にPHA蓄積が向上し、最大で4.2倍のPHA生産量向上が確認された。これらに加え、申請者の所属する研究室において見出されたPhaP変異体に関する解析を行った。この変異体は野生型のPhaP導入株に比べてPHAを高効率で生産可能であるが、その高生産化機構は不明であった。この変異体をin vitro, in vivoの両実験から評価したところ、野生型に比べPhaPの発現量が増加することでPHA高生産化が生じていることが明らかとなった。 これらの結果は、PhaPの新たな機能を明らかとするのみでなく、「PhaPによる重合酵素活性化」を利用することでPHAの高効率生産が可能であることをin vitro、in vivoの両面から示した独自性の高い研究であるといえる。
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