本研究は、「断層周辺の不均質構造が地震発生機構にどのような影響を及ぼすか」という地震学における根源的な問いに対して、地震の動的破壊の理論的研究から答えることを目的としている。その目的を達成するため、「現実的な構造不均質」において非平面断層モデルの解析を可能にする「拡張境界積分方程式法(XBIEM)」の開発と応用を行ってきた。本年度の研究成果は、以下の3点である。 (1)任意の媒質境界形状に関しても、各小領域が均質(等方である必要はない)であればXBIEMの定式化が適用可能であることを一昨年度に示したが、本年度においては各小領域が不均質な場合でも定式化が適用可能であることを示し、その解説をまとめた。XBIEMの数値計算の応用に関する限りでは一昨年度までの結果で十分であるが、XBIEMの定式化の元である表現定理がどのようなGreen関数の元で成立するかを、明示的に解説した意義は大きい。 (2)体積震源のモーメントテンソル表現について、教科書で一般的である非弾性変形を含むEshelby(1957)の埋め込みからではなく、XBIEMの定式化の基礎である表現定理を用いて、震源における実際の変位と応力の状態からはじめて、弾性変形のみの観点から解説を試みた。これにより、従来の理論的説明よりも物理的実態が明快な解説を行った。また、本成果は火山震源の物理モデリングとモーメントテンソル逆解析による火山震源過程研究との間の橋渡しに広く活用できる。 (3)昨年度までの研究において、2次元面内破壊の数値計算に必須である核関数を導出することに成功し、従来のBIEM核関数とXBIEM核関数とを結びつける生成関数を導出することに成功した。この生成関数を用いれば、数値計算に必要となる核関数は全て微分操作と線形結合で記述できる。本年度の学会において、これらの研究成果を発表した。
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