研究課題/領域番号 |
13J07426
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
野辺 拓也 東京工業大学, 大学院理工学研究科(理学系), 特別研究員(DC2)
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キーワード | B粒子 / 稀崩壊 / 超対称性 / スカラートップ / LHC / ATLAS |
研究概要 |
Bs粒子のミューオン対稀崩壊モードへの分岐比は標準模型では非常に小さいが、反応の過程に超対称性粒子(特にスカラートップ粒子、stop)などの寄与がある場合大きくなる。ATLAS実験では、低運動量ミューオンに対するトリガー効率を高く保つ事が重要である。本研究は、このモード取得用トリガーの開発とその性能評価を行ってグループに貢献した。特に、低運動量ミューオンに対するトリガー効率の精密測定結果は現在学術雑誌への投稿を目指して最終調整中である。また、4月にBeuty2013国際会議にてATLASのBs粒子ミューオン対崩壊探索の現状についてグループの代表として発表した。グループは7月にこれまでの解析結果をATLAS実験報告書(ATLAS-CONF-2013-076)で公開し、Bs粒子のミューオン対崩壊分岐比に約1億分1以下という上限値を与えた。 しかし最近、CMS、LHCb両実験は高い精度で標準模型と一致するBs粒子ミューオン対崩壊分岐比を測定した。これを受けて本研究ではLHCの高い重心系エネルギーを活かしたstopの直接探索に移行し、標準模型を超える物理の発見を目指す。 現行のATLAsの解析ではstopの信号は観測されていないが、これまでの解析手法ではstopとその崩壊先の超対称性粒子の質量差が小さい場合に感度が小さくなる問題があった。本研究ではこの領域をターゲットとする。終状態に予測される低運動量レプトンを要求することで強い相互作用による大きなバックグラウンドを抑制した。その他、信号シミュレーションに基づいた事象選別を導入した。6月にここまでの解析結果をATLAS実験報告書(ATLAS-CONF-2013-062)で公開した。今のところ信号の兆候は得られていないが本研究によりstopの生成断面積により強い制限を与えた。現在さらなる感度向上を目指して解析を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験グループはBs粒子崩壊分岐比の測定結果を発表し、本研究もこれに貢献した。その後、スカラートップの直接探索に移行した。こちらの解析も順調に進行しており、現在までの結果の公開に至った。以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
さらに厳しい事象選別を課してスカラートップ粒子の探索を続けている。その結果、シミュレーションから導いた予想される有感領域は以前の結果と比べて大きく向上した。特に、ターゲットであるスカラートップとその崩壊先の質量差が小さい領域で大きな感度の向上が予想される。現在、系統誤差見積もりの最終確認中であり、2014年早期に学術論文発表を目指している。他の解析モードと組み合わせてより広範な信号領域を探索することも予定されている。また、低運動量ミューオンに対するトリガー効率精密測定の結果についても、2014年早期に論文発表を目指す。その後、学位論文の執筆を行う。
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