研究概要 |
これまでBotryococcus braunii(以下、B. braunii)の湿藻体から、B. brauniiのコロニー内の炭化水素を有機溶媒で回収するのは、コロニーの周りに存在する水分が妨害するために、難しいとされてきた。 既往の研究(Kita et al.,(2010). Magota et al., (2012))から、次のことが分かっている。 1、B. brauniiの希薄藻体スラリーに対し、90℃以下の加熱前処理を行うと、コロニー内の炭化水素がヘキサンによって回収される。 2、加熱前処理は三種のB. brauniiに対して、コロニー内の炭化水素を回収するのに有効である。 3、加熱前処理の効果は加熱前処理時の温度保持時間よりも、加熱温度に依存する。 加熱前処理がいくつかのB. brauniiのコロニーから炭化水素を回収するのに有効なことや、その定性的効果は明らかとなった。しかし、加熱前処理によって何故、炭化水素が回収可能になるのかは明らかになっていない。そこで本研究においては、加熱前処理がB. brauniiに与える変化を電子顕微鏡で観察することによって、コロニー内外でどのような変化が起きているかを予測し、その変化を定量的に測った。それによって加熱前処理によるB. brauniiからの炭化水素回収のメカニズム解明に資することを目的とした。 本研究からB. brauniiに対する加熱前処理! の効果として以下の知見が得られた。 1、電子顕微鏡および光学顕微鏡による観察から、加熱前処理を行うとB. br"ultiiの藻体コロニーを覆う高分子物質がコロニー表面から分散する。そして、その高分子物質が水中へ分散する加熱温度は炭化水素の回収が可能となる加熱温度と一致する。(B race Berkeley株およびA race Yamanakaにおいて) 2、加熱ステージを用いた加熱連続観察から、B race Berkekey株では、炭化水講が回収出来ない加熱温度ではコロニーから高分子物質は完全には分散しない。しかし、炭化水素が回収可能となる加熱温度ではコロニーの高分子物質は完全に水中へ分散する。 以上の結果から、B. brauniiから炭化水素を回収可能とする条件はコロニー表面の高分子物質が分散することである、ということが明らかになった。
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