研究課題/領域番号 |
13J07480
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
増井 啓太 慶應義塾大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サイコパシー / 寛容性 / 共感性 / 利他性 / 協力行動 / 顔認知 / 事象関連電位 |
研究実績の概要 |
本年度は,まず,高サイコパシー傾向者の利他性が衆目の有無によって変化するかどうかを検討した。利他性の測定には公共財ゲーム(Public Goods Game)における公共財への投資額を用いた。このゲームでは,複数人のプレイヤーが一チームとなり参加する。各プレイヤーは最初に一定額のポイントが渡され,自分の手持ちのうち,いくらを集団の利益(公共財)として支払うかを決定するものである。また本研究では,別のチームと同時にゲームを行っていて,公共財の多かったチームには,集まった公共財を各プレイヤーに均等に配分することのできる権利が得られるが,少なったチームの公共財は全て没収されるという状況を設定した。加えて,半数の参加者には「あなたが公共財にいくら投資したかを他のチームメンバーは知ることができる」という教示を与え(衆目条件),残りの参加者には「あなたの投資額は他のメンバーには知らされない」と教示した(非衆目条件)。実験の結果,男性の高サイコパシー傾向者は,他人の目がない状況では集団の利益よりも自身の利益を優先するが,他人の目がある時には協力的になることが示唆された。一方で女性ではそのような傾向は確認されなかった。 現在は,寛容性と密接に関連する他者の顔認識に関わる実験を実施し,得られたデータの解析を行っている。本研究では,他者のパフォーマンスの程度,すなわちその人物のパフォーマンスが自分よりも優れているか否かの情報によってわれわれの顔認識がどのように変化するかを検討した。あわせて,顔認識を行う際の事象関連電位(Event-related potential; ERP)を測定し,他者のパフォーマンスに関する情報によって顔認知に関わるERPがどのように変化するかを検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの研究によって,利己的で共感性が低いとされる高サイコパシー傾向者であっても特定の条件下では利他的な振る舞いを行うことができる可能性が示唆された。このことは、高サイコパシー傾向者であっても特定の条件下であれば他者に対して寛容的な態度をとれる可能性を示唆している。高サイコパシー傾向者の寛容性の喚起に関する重要な知見が得られたという点で、当初の計画よりも進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在行っている,他者のパフォーマンスの程度の情報が顔認識に及ぼす影響についての研究をまとめ、その成果を学会等で発表する。 そして、これまで明らかになった高サイコパシー傾向者の寛容性喚起に関わる社会環境要因の影響を生理学的な指標も含めた、より詳細な方法で検討をするつもりである。
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