研究課題
社会的カテゴリーの違いがサイコパシーと表情判断との関連へ及ぼす影響を検討した。実験では、最初に参加者に認知機能を測定する課題を実施した。そして、その課題の成績をフィードバックした。その際に、実際の成績に関わらず全ての参加者に「あなたの成績は中程度であった」と偽の成績を伝えた。その後、別の課題として表情判断課題を行った。この課題は、笑顔の割合の異なる顔を見て、どの程度その人物が笑っているかを判断するものであった。表情判断課題では、課題前に、呈示される人物の認知課題の成績に関する情報が与えられた。与えられた情報は次の3種類であった。①課題パフォーマンスが参加者よりも優れていた、②課題パフォーマンスの程度は参加者と同程度であった、③課題パフォーマンスが参加者よりも劣っていた。本研究では、表情判断課題中の事象関連電位(Event-related potential; ERP)を測定し、生理学的反応との関連も検討した。実験の結果、呈示人物の課題パフォーマンスが参加者よりも劣っているという情報を与えた時、その人物の微細な笑顔を笑っていないと判断する傾向が高かった。この結果は、自分よりも課題成績の悪い人の笑顔に対して鈍感であったことを示唆する。また、ERPの結果について、課題パフォーマンスの悪い人物の微細な笑顔について判断する時のN200成分の振幅が減衰していた。N200は、刺激呈示後250ミリ秒後に出現する陰性の脳波で、選択的注意や魅力の判断、偏見などを反映するERPである。したがって、自分よりも課題成績の悪い人の笑顔に対して鈍感になる背景には、注意や魅力の判断に関連する生理学的反応の大きさが関与することが明らかとなった。これらの結果はいずれもサイコパシー傾向とは関連しなかった。今後は様々な表情を用いてより詳細な検討を行う必要があろう。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Translational Issues in Psychological Science
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パーソナリティ研究
巻: 24 ページ: 26-37
http://doi.org/10.2132/personality.24.26