研究課題
本研究では、水田輪作体系が流域の水・物質循環へ与える影響の解明を行うことを目的とし、水文流出モデルによる河川および地下水からの窒素・リン流出解析を行う。特に、高度化された水田生産基盤技術の一つである「地下水位制御システム(FOEAS)」導入に伴う下流への流出経路とそのタイミングの変化を明らかにする。初年度である平成25年度は、地下水制御型水田輪作サブモデル開発および輪作畑内の地下水位変動による水・栄養塩収支の解明に向けて以下のとおり進めてきた。1. 地下水位制御型水田輪作サブモデル開発既存の水文流出モデルに、輪作サブモデルおよび地下水位制御機能を追加し、また、亀裂発達メカニズム、リン流出制御の改良を行った。2. 地下水位制御システム設置ライシメータを用いた地下水位変動による水・栄養塩収支の解明(1)表面流出量および暗渠排水量の測定 : FOEASライシメータ全6区画のうち、地下水位を①標準区(-30cm)、②低水位区(-60cm)、③水位変動区(週一度−30cmになるように灌水)の3パターン2反復に区分し、ダイズ・コムギを作付け時の栄養塩類の排水パターンの違いを明らかにしてきた。この結果、地下水位を低く設定した場合、栄養塩流出量が増加する可能性が示唆された。(2)土壌水分および土壌特性の測定 : 各区画において、給俳水量、土壌水分、地下水位、温度、電気伝導度を連続計測できる観測システムを構築し、モニタリングを継続している。また、土壌調査を作付け前後に実施した。この結果、設定した地下水位によって、土壌の物理・化学性が大きく変化した可能性が示唆された。以上で得られた成果を論文としてまとめ、また国際会議および国内会議において発表した。
2: おおむね順調に進展している
初年度の計画通りにモデル改良およびライシメータ試験を実施している。これに加え、所内他圃場や他地域(千葉県、広島県、滋賀県)のFOEAS圃場においても調査を実施しており、現象の普遍性を確認すると共に流域規模へスケールアップする準備も進めている。以上から、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
初年度の結果から、設定した地下水位の違いにより土壌の物理・化学性が変化し、その結果として栄養塩流出量にも影響を与えている可能性が示唆されている。このため、土壌の物理性の変化を再現する実験を行う。また、コムギ栽培時には比較的窒素濃度の高い暗渠からの流出が多く確認された。この傾向を確認するため他地域の大規模FOEAS圃場において暗渠排水の測定および作付けや地下水位との比較検証を行っており、二年目もライシメータ試験と併せて継続して行う。さらに、最終的な流域影響評価に向けた改良モデルの統合および検証と解析のためのモデルのセットアップも行う。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (9件)
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