研究課題
本研究は水田高度利用技術導入が流域の水・物質循環へ与える影響を解明するため、地下水位制御システム(FOEAS)が設置されたライシメーターを用いてダイズ及び冬コムギを作付けし、環境中への水・物質流出量を測定し、水文流出モデルによって評価を行った。ダイズ作付期間中は地下水位を①-60cm区、②-30㎝区(FOEAS標準)、③水位変動区の2反復3パターンに区分し、冬コムギ作付期間中は全て-60cmとした。観測の結果、地下水位を高く設定した②の条件において排水中の硝酸濃度は低くなった。地下水中の酸化還元電位、重炭酸イオン濃度、硝酸の窒素・酸素安定同位体比分析の分析結果が脱窒反応を支持したことから、溶脱した施肥窒素が地下水面近傍で脱窒したことが硝酸濃度低下の要因と考えられた。窒素濃度に排水量を乗じた窒素流出量は、ダイズ作付期間中は③>①>②の順番で多い結果となった。③は最も多い結果となり、地下水位の変動に伴って土壌中での有機物分解が促進された可能性を示した。冬コムギ作付け時では、給水量および降水量が少ないため窒素流出量はダイズ作付け時よりも少なかった。以上の結果から、水田を畑地として利用した時に一般的な暗渠が設置された水田に近い地下水位に比べて、FOEASによって地下水位を高く保つことで、窒素流出量を抑制できることが確認された。そして、FOEASの地下水位制御機能を模したサブモデルを導入したSWATモデルを用いて流域スケールでの影響評価を行った結果、流域内の水田(単作)全てにFOEAS(標準地下水位設定-30cmを適用)を導入した場合、流域からの栄養塩流出量は輪作の導入に伴って6~9%の増加傾向を示した一方で、農作物収穫量は大きく増加した。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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