研究課題/領域番号 |
13J07516
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉井 優 東北大学, 大学院薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | penitrem E / 全合成 / シクロブタン環 / ケテンジチオアセタール / actinophyllic acid / 還元的二重アミノ化反応 |
研究概要 |
生理活性天然物インドールジテルペンアルカロイド類の一つであるpenitrem類は、カルシウム依存性Maxiカリウムチャネルを強力に遮断する効果が知られており、緑内障治療薬への応用が期待されている化合物群であるが、複雑な構造を有するため、合成が困難であり量的供給が限られている。申請者は既にpenitrem EのA-E環を有する左セグメントの合成に成功しているため、平成25年度は残された課題であるエキソメチレンの構築を検討した。しかし、A環を有する左セグメントではGrieco-西沢反応が進行せず、エキソメチレン体を得ることが出来なかった。この原因として、A環上のアセタール部位が本反応条件下不安定であることが考えられたので、トリオールに対し検討を行った結果、エキソメチレンの構築に成功した。また、鍵となるケテンジチオアセタールを用いた環化反応では、シクロブタン環が開裂した化合物が得られた。この開裂反応は、TMSエーテルがルイス酸により活性化され脱離したために進行したと考えている。ルイス酸を用いたスルホニウムイオンを経由する環化反応では目的の環化体を得ることが出来なかったが、penitrem Eにおけるシクロブタン環は強酸性条件下では開裂するという重要な知見を得た。そこで、今後は、申請者が発見したベンゼンスルホニルインドールを用いた新たなアプローチにより、penitrem Eの全合成を達成できると期待している。 さらに、2013年4月から8月まで申請者はソウル国立大学へ留学し、インドールアルカロイドactinophyllic acidの合成研究を行った。本化合物は高度に縮環した骨格を有するため、不斉全合成は現在までに一例の報告に留まっている。これまでに、申請者はジアルデヒドを基質とし、鍵反応である還元的二重アミノ化反応を用いたビシクロ[5.4.1]環の構築に成功した。本反応では、高希釈条件下、パラメトキシベンジルアミンを長時間かけて滴下することが分子間反応を抑えるために重要であり、高収率で目的の化合物が得られることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Grieco-西沢反応によってエキソメチレンを構築することで、文献既知であるヨードインドールからわずか13工程でpenitrem Eの左セグメントを完成させた。また、actinophyllic acidの合成研究では、鍵反応となる還元的二重アミノ化反応を用いたビシクロ[5.4.1]環の構築や合成終盤でのFischerインドール合成に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
Penitrem Eの合成については、シクロブタン環の開裂を促進する強酸を用いずに、F環部を構築する必要がある。申請者は、ベンゼンスルホニルインドール由来のアニオンとケテンジチオアセタールとの反応を行うと、ベンゼンスルホニル基の転位に伴い、インドール窒素部位で環化が進行することを発見している。そこで、得られた環化体に対し、ケテンジチオアセタールの加水分解とカルボニルの還元を行った後、C-N結合の開裂とインドール3位における環化を経て、F環部を構築できると考えている。 また、actinophyllic acidの合成については、現在、合成終盤においてFischerインドール合成に成功している。今後は分子内環化反応とアルキル化を行うことで全合成を達成する。
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