研究課題/領域番号 |
13J07541
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
坂倉 真衣 九州大学, 人間環境学研究院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 博物館 / 公民館 / インフォーマルな学習環境 / 学び / 出会い / 博物館教育 / 科学コミュニケーション / ユーザー |
研究概要 |
平成25年度は、1)公民館と博物館それぞれで行われてきた「学び」の体系化(文献調査)、2)Falk & Dierking (1992)が提示した"Interactive Experience Model"を元にした博物館、公民館の利用者(以下、ユーザー)の体験を捉える共通の枠組みの再考(利用者の観察を通した質的調査)、3)インフォーマルな学習環境として特に先進的な事例であると考えられるアメリカ西海岸の博物館3館の視察、4)1)~3)の結果を元に開発した2件の学習プログラムの開発、試行を行った。その結果、主に1)博物館、公民館において実施される1つ1つの事例には共通性を見いだすことが出来るが、それらを提供する人材の違いによって最終的な「学び」の終着点(学芸員の専門分野に限定されるのか、生活市民としてそのコミュニティの地域課題解決を担うのかなど)には差異が見られること、2)「学び」の提供者側(博物館の場合は学芸員、公民館の場合は公民館主事)が意識をしないような来館者の「学び」の現状、3)インフォーマルな学習環境としては、自発性を妨げるような物理的、心理的な障壁がないことが重要であること等が明らかとなった。そして、特に2)によって、異なる館種(本研究の場合は博物館、公民館)のインフォーマルな学習環境での体験を捉える上でより適切と考えられる「出会い」という概念が浮かび上がった。ユーザーと展示物・展示空間とのあいだにおきる相互作用の理論化は、これまで博物館教育においても科学コミュニケーション分野においても十分には進められておらず、これらを「出会い」という概念の元に新たに捉え直すこと、それによって両者の特性を活かした学習プログラムを開発し、試行を行った本年度の研究成果は意義があったと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
博物館・公民館という異なる館種のインフォーマルな学習環境での「学び」を捉えることの出来る「出会い」という新たな概念を浮かび上がらせることが出来た。このことによって、これまで別々に捉えられてきた両者の「学び」を捉えることの出来る共通の枠組み、研究手法が開発される準備を整えることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、「出会い」という概念およびFalk & Dierking (1992)が提示した"Interactive Experience Model"を元に、これまで十分に理論化されてこなかった博物館・公民館という異なる館種におけるユーザーと展示物展示空間および他の利用者・参加者とのあいだに起きる創発的な相互作用を捉える取組みとそのための研究手法の開発を試みる。そのため、研究計画では、博物館5館、公民館30館という量的な調査を主としていたが、今後は1つの館でのユーザーの体験をより微細に捉え、理論化するために質的調査を中心として行うこととする。
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