今年度は、エキサイプレックスを利用した高効率な有機ELデバイスの開発を目指した。 一つ目に、高効率かつ低駆動電圧を両立する高性能青色有機EL素子を実現するためワイドギャップなエキサイプレックスの開発および設計指針の導出を行った。新規な高T1ドナーおよびアクセプター分子を設計・開発し、28種のドナー、アクセプターの組み合わせについてエキサイプレックス形成の検証を行い、14種の青色エキサイプレックスの開発に成功した。それらの化学構造と光電子物性の観点から、エキサイプレックスを形成するための設計指針を導出した。 二つ目に、エキサイプレックスをホストとして用いた深い青色リン光素子の開発を行った。エネルギーギャップ3.29 eV以上を有するSiDMAC:BPSPFからなる青色エキサイプレックスをFirpicよりも深い青色リン光錯体である(dfpypy)2Ir(acac)のホスト材料として応用し、素子を作製し、100 cd/m2時、3.04 V、電力効率31.8 lm/W、電流効率30.8 cd/A、外部量子効率17.0%を示す低駆動電圧と高効率を両立した有機EL素子の開発に成功した。 最後に、エキサイプレックスのホスト分散による発光効率向上を目指した。従来の発光材料は、濃度消光を抑制するためホスト材料に分散させ高い発光量子効率が得られる。ドナー・アクセプターの二分子からなるエキサイプレックスに関しても、同様に発光効率の向上と凝集抑制による発光波長のブルーシフト化も期待できると考えられる。そこで、緑色エキサイプレックスを様々なホスト材料に分散させ検証したところ、発光効率の向上と同時に青色エキサイプレックスへ変換させるという、新しい手法を確立した。デバイス特性においてもホストを用いない素子に比べ、エキサイプレックス-ホスト系の素子では約2倍の大幅な向上が見られた。
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