| 研究概要 |
航空機のような運用を目指す再使用型の将来宇宙輸送システムでは, 予め想定した軌道の飛行だけでなく, 飛行環境や制約条件に応じて随時軌道変更を行い, 非常時には飛行中断し安全に帰還するなどの柔軟なミッション運用が求められる. 従って, どのような事態においても確実な自律航行を実現するには, 従来方法のように基準軌道だけに頼ること無く, また唯一の最適軌道のみならず複数の準最適な代替軌道をリアルタイム生成する必要がある. 本研究では, 代替軌道を含む最適軌道を生成する方法として, 新たな解の探索手法である動的分散遺伝的アルゴリズムDynDGA (Dynamically Distributed Genetic Algorithm)を提案した. その最適解探索のリアルタイム性を実現するためにFPGA (Field Programmable Gate Array)とよばれる集積回路上にアルゴリズムを構築することを試みた.
DynDGAは, 各個体の特性を端的に表すような特徴量を定義し, その特徴量により個体間の類似性を識別することで, もともと一つだった母集団を適切な数のサブ母集団(島)に分類する. この島は, 必要であれば再分割や他の島との統合を繰り返す, 数値シミュレーションの結果, DynDGAにより母集団の島への分割統合がスムースに進み, 複数の良好な軌道を生成できることがわかった, また遺伝的アルゴリズムによる探索は, 従来の準定常的な近似解等では解として得ることが難しい, 急降下や急旋回を伴う軌道も解として得られることがわかった.
DynDGAの前段階としてGAによる軌道生成のリアルタイム性の実現のために, FPGAを用いて処理を並列化し計算時間の大幅な短縮を実現するシステムを試作した. 同システムを有翼ロケット実験機およびカイトプレーンと呼ばれる小型飛行機に搭載し, 飛行実験を通してリアルタイム軌道生成の実証した. また, これらの飛行実験結果から, DynDGAは複数のFPGAを用いた並列計算によりリアルタイム計算が可能であることを証明した.
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
より安定かつ実時間で大域最適軌道の生成を可能とするために自身が母集団をダイナミックに分割・統合する遺伝的アルゴリズムの開発し, 従来の分散遺伝的アルゴリズムよりも軌道生成に有効であることを示すことができた. また, 実機での遺伝的アルゴリズムによるリアルタイム最適軌道生成の実証を行うことができ, 上記の新しい遺伝的アルゴリズムのリアルタイム性も実現することができた.
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| 今後の研究の推進方策 |
今後の課題は, 今後は提案手法を広範囲の計算条件に対応できるようにすることである. そのために, 母集団の分割のために用いる特徴量に工夫を施す必要がある. これま. ではオンボードでのリアルタイム軌道生成の実証のみで, その結果を実機の誘導に用いるところまで至っていない. 今後, 有翼ロケット実験機の誘導システムとして組込み, 飛行試験によりリアルタイム誘導の実証を行う.
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