研究課題/領域番号 |
13J07586
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮田 慎吾 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | SREBP / Xanthohumol / Insig / SCAP |
研究概要 |
【1. Xanthohumol (XN)による活性型SREBP減少機構の解析】これまでに、XNはInsig非依存的に活性型SREBPを減少させることを示した。そこで、XNの作用機構の分子レベルで解析した。 (1)活性型SREBPの分解 セリンプロテアーゼ阻害剤AEBSFは前駆体SREBPの切断酵素SIPを阻害し活性型SREBPの供給を絶つため、経時的に活性型SREBPが分解され減少する様子が観察できる。AEBSF処理後にXNを添加しても活性型SREBPの減少速度は変動しなかった。したがって、XNは活性型SREBPの分解を促進しないと考えられる。 (2) S1P、S2P活性 通常、SREBPは小胞体膜上に留まっており、ステロール枯渇時にゴルジ体に輸送された後、S1P、S2Pによる切断を受ける。しかし、Brefeldin Aを処理するとゴルジ体が小胞体と融合し、ステロールの有無に関わらずSRBBPの切断、活性化が行われる。Brefeldin A存在下でXNを処理すると、依然として活性型SREBPが形成された。したがって、XNはS1P, S2PによるSREBPの切断を阻害しないと考えられる。 (3) SCAP-SREBPの小胞体・ゴルジ体間輸送 GFP-SCAP安定発現株にXNを処理した後免疫染色を行い、SCAPとゴルジ体マーカーの局在を蛍光顕微鏡で観察した。その結果、XN処理したサンプルではSCAPのゴルジ体への集積が抑制された。また、XN処理した細胞から超遠心法により調製した小胞体画分、ゴルジ体画分におけるタンパク質を解析したところ、XN処理したサンプルではSCAP, SREBPは小胞体画分に局在していた。以上の結果より、XNはSCAP-SREBPを小胞体に留めることが示された。 【2. 生体内におけるXanthohumol (XN)の効果検証】生体内でもXNがSREBP活性を抑制するか、また生活習慣病改善に寄与するかどうかを検討するために、マウスに0.2%または0.4% XNを混合した高脂肪食を7週間摂食させた。その結果、XNの濃度依存的に体重増加が抑えられた。また、XN摂取により肝臓における活性型SREBP-1が減少し、標的である脂肪酸合成系遺伝子発現やトリグリセリド蓄積量、肝臓重量も低下した。したがって、XNは動物個体において肝臓SREBPの活性化抑制を伴い、肥満や脂肪肝の改善に寄与することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、1年目は培養細胞レベルでの食品成分の作用機構解析のみを行う予定であったが、実際にはそれだけにとどまらず、動物個体レベルでの効果検証を行うこともできたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に行った研究により、XNはSCAP-SREBPの小胞体からゴルジ体への輸送を抑制することが示された。しかし、XNが具体的にどの因子に作用してその効果を発揮しているのかは現在のところ不明である。本年度は、主にSREBPの小胞体・ゴルジ体間輸送に関与する因子に着目して、XNの作用点を探索していく予定である。 また、本研究ではXN以外にも、SREBP活性を抑制する食品成分としてIsoxanthohumol (IXN)やAllyl Isochiocyanate (AITC)などを見出している。今後、これらの化合物についてもSREBP活性抑制メカニズムや生体内における効果を解析していく。
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