研究課題
本研究の対象であるタウタンパク質は生理的条件下で単体では一定の立体構造を形成せず、多くの準安定な立体構造集団を成す天然変性タンパク質であり、多数のリン酸化サイトをもつ。とくにT231とS262のリン酸化タウタンパク質は微小管との結合親和性を低下させる。そのリン酸化による微小管との結合親和性変化について立体構造集団を算出することで明らかにすることが本研究の目的である。タウタンパク質は441アミノ酸残基の大きな超多自由度な系である。そこで、我々は研究期間中に粗視化モデルを開発・発展させることで計算を可能にした。当初の目標であるタウタンパク質の非リン酸化体、T231リン酸化体、S262リン酸化体、T231S262両リン酸化体だけではなく、αシヌクレインやKIDのリン酸化体、そしてタウ断片の4リン酸化体についても立体構造集団を算出することができた。そこで、リン酸化による分子内応答の共通性を明らかにすることができた。さらに粗視化モデルの開発を進めたことで、タウタンパク質と微小管との結合計算を実施することができた。これまで知られていたタウの微小管結合部位を計算から再現できただけではなく、T231リン酸化による分子内応答部位がタウ-微小管結合に関与している示唆を得ることができた。以上の研究成果は学術学会にて報告を行なった。加えて、天然変性タンパク質がもつ立体構造の多様性(分子のやわらかさ)と結合親和性および結合/解離速度の関連性を粗視化モデルによって明らかにすることができた(Proteins 2016 in press)。よって、本研究を遂行することで、当初の目標以上の天然変性タンパク質のリン酸化による分子内応答と結合親和性変化を明らかにすることができ、粗視化モデルの開発・発展を実施できた。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biophysical Reviews
巻: 8 ページ: 45-62
0.1007/s12551-015-0189-z
Proteins: Structure, Function and Bioinformatics
巻: - ページ: -
10.1002/prot.25057