研究課題/領域番号 |
13J07613
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
本井 碧 九州大学, 芸術工学研究院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 共感 / 遺伝的多型 / 生理反応 / 性格特性 / 個人差 |
研究概要 |
ヒトは視覚・聴覚など様々な刺激から快・不快などの情動を喚起され、それに伴い多様な生理的反応を示す。これまで遺伝や文化などのスケールで「集団」に着目して、生理心理反応の個人差を説明する要因について検討し、関わったが時間ごく短い社会的集団であっても生理反応を変化させることが分かった。近年、共感と呼ばれる人類特有の感覚が注目され、神経基盤が明らかになりつつある。それに伴い、共感特性(共感しやすさ)とERP反応の関連が示唆されている。社会的集団の親密性の変化と遺伝子的集団において生理心理反応の推移が収束~拡散のどの形を示すかを検討することにより、社会的集団が個人差を構成する要因であるかを明らかにできると考えた。今年度は、実験に参加してもらう母集団を確保するため、約100名の被験者を対象に感受性の個人差を構成するであろう性格特性を調査した。その集団に対し、唾液を採取し人類学的集団のマーカーであるmtDNAハプログループおよび性格や共感に関わるセロトニントランスポーター遺伝子タイプ(5TTLPR)、オキシトシン遺伝多型(OXTR rs53576)を調査した。さらに、実際にそれらのグループの特性を踏まえた上で、単純な音声刺激や視覚刺激を用いたいくつかの実験を行い、集団を形成する前段階の反応の個人差について特にERP反応と性格特性・遺伝多型との関連を明らかにした。加えて、映像刺激により親密性が異なる社会的集団を観察した際の脳活動について検討した。その結果、観察する集団の親密性が高い場合、頭頂部における脳波のα波の抑制が有意に大きいことがわかった。すなわち、その集団に所属しない場合でも親密性は生理的反応に影響を及ぼすことが考えられる。今年度は個人の特性の把握と、親密性の影響についての検討を別の実験系として行ったため、来年度は実際に被験者に集団を形成させる実験などを行い、両者の関連を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
個人特性の把握を十分に行うことが重要であると考え、当初の予定を後ろ倒しにして反応の個人差や性格特性の把握に時間をとったため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度収集した情報を元に被験者の募集等、実験を円滑に実施できるようにする。
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