研究課題/領域番号 |
13J07647
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平田 知久 京都大学, 高等教育研究開発推進センター, 特別研究員(PD)
|
キーワード | 移動 / 歓待 / サディズム・マゾヒズム / 比較社会学 / 都市社会学 / 地域社会学 / 人文地理学 / 文化人類学 |
研究概要 |
今年度の研究実績は、2編の英語論文(2編とも書籍の1章分、うち1編は出版済)、1編の日本語論文(書籍の1章分、2014年出版予定)、1回の学会報告(若手英語ワークショップのオーガナイザー)である。 【出版済みの英語論文の概要】東アジア・東南アジアのネットカフェ(以下ICと略記)とデジタル・ディバイドとの関係をM. ヴェーバーの階級・階層概念から分析した。帰結では、この問題の解決の可能性を人々の選択の可能性を開く社会のあり様に求め、本研究の「歓待」との接続を果たした。 【出版待ちの日本語論文の概要】フィリピンのマニラのICに関するフィールド・インタビュー調査をもとにして、ICが現代のフィリピン人の親密圏形成を補完すると同時に、インターネットを通じた様々な問題を孕むことを指摘した。特に結論において、マニラにおけるICの店主が海外での出稼ぎ労働で蓄えた資金をもとにICを開店している複数の例を分析し、その場を維持しつつ人々にインターネット環境を提供するという「場の保護者」という形象を得た。この形象は、歓待の場における主人の形象との連関を見ることができるという点で、本研究との連続性を持つものである。 【出版待ちの英語論文の概要】日本の現代のICのあり様および「インターネットカフェ難民(住居喪失不安定就労者」」と呼ばれる人々のic利用を分析し、それを香港のICのあり様および香港に出稼ぎ労働者のIC利用と比較・考察した。その比較の過程で、日本のICに起こる様々な問題の解決の鍵概念としての歓待に論及し、香港のICにおいて見られる歓待の実践例を分析した。 【学会報告の概要】国内外の若手研究者の交流と研究ネットワーク形成を目的とし、本研究の主題とも重複するインターネット利用と現在の都市空間のあり様の関係を主題とする英語ワークショップを企画・立案し、3件の英語報告の取りまとめを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィールド・インタビュー調査については、研究計画上は、今年度タイ及び韓国で上記の調査を行う予定であったが、調査を予定していた時期に、政治動乱が起こる可能性が出たこと、また、昨今のスマートフォンのアジア諸国への普及を鑑み、フィリピン・インドネシアから香港へと移動する人々のメディア利用の現在を早急に把握する必要があることから、次年度に予定していた都市での調査を前倒しした。 その結果、現在(2014年時点)の香港とシンガポールのICの増減(香港は減少傾向にあり、シンガポールはほぼ横ばい)についての知見を得ることができたことは、本研究の今後の展開とって非常に大きな収穫である。 また、歓待という概念に関する研究については、サドの著作における「歓待」についての分析から、次年度の研究への課題を別出し、またフィールド・インタビュー調査をもとにした諸論文において、「歓待」という実践への接続点を示すことができた。 以上のことから、現在の研究進度はおおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度実施できなかった韓国・タイでのフィールド・インタビュー調査については、政情との関係から次年度(ないしは次々年度)に、研究計画上の調査地と併せて行う。 また、歓待という概念に関する研究については、サドの著作を貫く原理にまでさかのぼった上で、サド的歓待(サド的自己放下)という観点から、歓待という実践の分類を試みつつ考察を進める。
|