研究課題
本研究では、量子情報の送受信を目的として、超伝導人工原子を用いたマイクロ波量子光学および量子情報ネットワーク構築という課題名で研究を行っている。本研究を実施する上で鍵となるのは超伝導人工原子によって生成されたマイクロ波単一遍歴光子である。この単一光子は、超伝導人工原子間、超伝導共振器間、ならびに超伝導人工原子-量子トランスデューサー間の量子情報の送受信ための有望な担い手として期待される。当研究課題では、特に、遍歴光子を介した超伝導人工原子間のリモートエンタングルメントの実現を目標として研究を進めている。本研究課題の申請時では、(1) 2つの独立した超伝導人工原子からの二光子干渉、(2)マイクロ波単一光子の波形整形によるマイクロ波光子受信の忠実度の向上という2つの課題を超伝導人工原子によるマイクロ波量子光学および量子情報ネットワーク構築という課題に取り組むにあたり、マイクロ波単一光子波形整形と二光子干渉測定を主軸として研究を進めていた。しかし、昨年、海外の研究グループから同様の結果が報告されたため、研究方針の修正を行った。本年度は、新たな研究方針としてタイムビン方式を用いる新たな方向性を見出し、現在、それに向けた超伝導回路の設計、作製ならびに測定装置系の構築に従事している。また、上記の研究と並行して、ジョセフソンパラメトリック増幅器(JPA)を用いた計測技術の立ち上げも行った。JPAは微小信号の増幅を、雑音を付加することなく行うことができるので、超伝導人工原子の単一試行の量子非破壊読み出しに利用されている素子である。マイクロ波単一遍歴光子という微小信号を扱う本研究においても、大いに有益であると期待される。JPAはスクイーズド光の生成源としても使用することが可能である。本年度は、超伝導人工原子を搭載したアルミニウム空洞共振器に、JPAで生成した真空スクイーズド状態を入射し、共振器内の光子数分布に依存した超伝導人工原子スペクトルを測定することで、その真空スクイーズド状態を測定することに成功している。
3: やや遅れている
研究実績の概要にも記載した通り, 研究方針の修正を迫られため、新たな方向性を模索するために勉強、調査に時間を費やした。そのため、量子情報ネットワーク構築の進捗としては、当初の研究計画からはやや遅れている。
進捗の遅れは、研究実績の概要にも記載した通り、研究方針の修正を迫られ、新たな方向性を模索、検討に時間を費やしたからである。現在は新たな方向性としてタイムビン方式を試みようと、超伝導回路の設計、作製ならびに測定装置系の構築に取り組んでいる。今後の方針としては、タイムビン方式実装のための超伝導回路の作製、評価系の構築を行い、タイムビン方式マイクロ波遍歴光子を生成、超伝導人工原子とタイムビン量子ビットとのエンタングルメントについての研究を進めていく。
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Nano Letters
巻: 13 ページ: 4733-4738
10.1021/n1402286v
Applied Physics Letters
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