研究課題/領域番号 |
13J07658
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
比嘉 夏子 国立民族学博物館, 特別研究員(PD)
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キーワード | 社会空間 / パフォーマンス / 演劇性 / ポリネシア |
研究概要 |
平成25年度は本研究活動の初年度として2度にわたる海外調査(計約3ヶ月間)を実施し、以下の主要な成果を得ることができた。 ①トンガ王国における贈与・交換儀礼の調査では、村落部における葬儀や結婚式のありかたと、それに伴う贈与交換、また儀礼実践の現代的変容について、村落での聞き取りをおこなった。また首都においては、トンガの贈与儀礼および伝統的舞踊に関する歴史資料の収集と歴史性についての調査をおこなった。 ②サモア独立国における舞踊や演劇の調査 : 毎年開催されるサモア文化の祭典Teuila Festivalに参加し、そこで演じられるさまざまなパフォーマンスを映像として記録した。 ③ニュージーランド(オークランド)でオセアニア系移民によって開催される行事Pasifika Festivalおよび、ポリネシア系移民の学生たちが主催するPolyfestに参加し、移民コミュニティによるパフォーマンス実践に関して調査を実施した。ここでは特にトンガ人移民コミュニティのネソトワークや母国との関係性維持についての調査を行った。 上記のフィールドワークで得たデータからは、とりわけ①において贈与交換儀礼に内在するパフォーマンス性が明らかになった。その一方で、②や③からは舞踊や演劇から現れる即興性や観客とのやりとりが占める重要性を指摘することができた。更にこの両者を照らしあわせることによって、一見するとその形態や目的を異にする各々の場面を、ある種の演劇性や即興性によって織りなされたパフォーマンス実践として包括的に分析することが可能となった。 本研究の成果については、年度内の研究会等においても積極的に発表してきたが、現在も『国立民族学博物館研究報告』への投稿論文および平成26年度内に出版予定の著書として出版の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に掲げた研究目的である(i)ローカルな社会空間認識と、(ii)そのような社会空間において顕在化する行為の演劇性の解明に関して、当該年度のフィールドワークによって得られたデータを参照することによって(i)の精緻な組織化のプロセスおよび(ii)をとりまく多様な実践領域が明らかになった。今後はそれらの分析結果を理論化していくことが課題となるが、初年度終了段階ではおおむね順調に研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究は主に、空間構成や儀礼進行との関連において西ポリネシアのパフォーマンス実践を位置づけなおす試みだった。今後はまずフィールドワークで得られたデータを理論化すべく、既存のパフォーマンス研究とコミュニケーション理論とを架橋する理論構築をめざす。またいっぽうでは個々の参与者の認識や身体性に着目して研究を進め、より精緻な分析へと展開していく予定である。
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