研究課題
平成26年度は、a)2度にわたるフィールドワークを実施し、b)本研究課題とも関連する原稿を執筆および編集した。各々の詳細は下記の通りである。a)1度目の海外渡航では、アメリカ・ハワイ州においてフィールドワークを実施し、①ホノルル市に在住するトンガ人コミュニティについて、キリスト教会における人びとの集会に参加し、宗教的実践における社会空間構成と振る舞いについて観察、記録した。②また人びとへのインタビューも実施し、母国トンガとハワイとを往来する様相と、ハワイにおける生活が経験的にどのような変化をもたらしているのかについて調査した。また、トンガを含むポリネシア地域の日常的な演劇性について、歴史資料を収集し、比較検討を行った。2度目の海外渡航では、ニュージーランド・オークランド市において、①トンガを含むポリネシア地域の日常的な演劇性とその歴史的変容過程について、オークランド大学図書館およびオークランド博物館資料室において、文献資料の収集と映像資料の検証を行いし、比較検討を行った。②またオークランド市郊外のマヌカウ地区に居住する太平洋島嶼民コミュニティについて、日常生活における相互扶助実践を調査した。また若者を中心とした犯罪対策やDVなど暴力抑止についてどのような教育、啓蒙活動が実施されているのか、聞き取りを行った。b)研究業績「対他的な〈ふるまい〉としての粗放的飼育--トンガのブタをめぐる儀礼的相互行為--」では、人間と動物との関係性を探求する研究の一環として、トンガ王国の家畜飼養に焦点を当てて考察した。本研究課題でも鍵となる〈社会空間と人びとの行為へのミクロな視座〉を用い、家畜飼養の実践を捉えなおすことによって、ブタ飼養を人間とブタとの二者的相互行為のみならず、ブタを介在した人間同士の相互行為という重要な側面が明らかにされた。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度の研究活動においては、前年度の成果であるトンガ・サモアおよびニュージーランドのフィールドワークで得られたデータを立脚点として、それらを地理的な広がりのなかで、また歴史的な変遷のなかで位置づけるべく、さまざまな資料と照らし合わせていった。特にトンガ人移民コミュニティにおける贈与実践とそうした場における「ふるまい」が果たす重要性については、ハワイとニュージーランドでの地域間比較も可能になったことで、詳細な検討をくわえることができた。本研究では当初から、現代のポリネシアの人びとによる多様な行為実践を、「ふるまい」という観点から包括的にとらえることを重要な目的のひとつとしている。この意味において、平成26年度のフィールドワークおよびその成果を発表した論文は、そうした多様な行為実践の各事例を提示するばかりでなく、それらをつなぐ鍵概念ともいえる「ふるまい」について考察する端緒としても大変有用な成果となった。
本研究課題を今後も推進していくにあたっては、基本的に当初の研究計画に沿って進めていくが、最終年度となる今年度は、特に成果の全体的なとりまとめとその出版とを中心に据える。具体的には、贈与とふるまいをめぐっての論考(単著)の出版を予定しており、「ふるまい」概念の理論化をめざす。また前年度までの研究からは、当初に掲げた研究目的である(ⅰ)ローカルな社会空間認識と、(ⅱ)そのような社会空間において顕在化する行為の演劇性の解明、について必要となる多くの基礎的なデータが得られたが、それらをより詳細に分析するために、当事者の人びとへのインタビューを実施する予定である。
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巻: 6 ページ: 227-232