研究課題/領域番号 |
13J07671
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
武田 祥英 千葉大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | 第一次大戦 / 英国の対中東政策 / 石油政策 / ハイファ / メソポタミア / 石油パイプライン / パレスチナ / ド・ブンセン委員会 |
研究概要 |
研究史上、英国の第一次大戦期対パレスチナ政策に関する研究は主として大戦中の諸政策を対象としてきた。本研究は英国の対メソポタミア政策、特に海軍省、商務院, インド省を中心とした部局が1900年代初頭からメソポタミアの諸利権、特に石油利権を確保するために策定していた政策に注目することで、英国の対パレスチナ政策が大戦期に特徴的に表れるものではなく、1900年代半ばまで続く連綿とした政策のなかで把握されうることを明らかにしたいと考え研究を進めてきた。平成25年度は、大戦期英国の対中東政策の基礎を形成したド・ブンセン委員会の報告書と議事録の精読を繰り返しながら、ここに示された諸政策が大戦期以前と以後をどのようにつなぐものなのかを検証した。その結果、石油政策は海軍省の管轄とされ海軍内でも極めて秘匿性の高く、かつ重要なものでありメソポタミアの石油を効率的に地中海に運搬することは極めて大きな意味をもっていたことが明らかとなった。ド・ブンセン委員会においてメソポタミアとパレスチナの確保が策定された背景には、委員会議事を通して関係省庁内で情報が共有されたこと、そして石油積出港としてのハイファの重要性が認識されたことが極めて重要であったことが史料からも明らかになった。しかしそのハイファの重要性は機密情報とされたため、実際にハイファが英国の委任統治の下で開発されるまでは政府・軍部内でも様々な混乱がおきていた。しかし海軍省は英国と石油に関する様々な情報を更新しながらその重要性を内閣に訴えかけ続け、この政策案を確固たるものとしていった。このプロセスにおいて中心的な役割を担った海軍省のスレイド提督と地質学者のカドマンは、英国政府内で石油問題を扱う部局の設立に大きな役割を果たし、カドマンはその後この部局で各省庁との調整役として1930年代まで中心的役割を果たすことになった。(申請書5頁目、研究目的①-①から①-⑤の達成)
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
史料を精読することによって、先行研究では触れられていなかったことや、通常研究史で常識として扱われていることを再検討し、さらに精緻に明らかにすることができた。特にド・ブンセン委員会の議事録に関しては英国の石油政策を考慮するうえで極めて重要であるにも関わらず、先行研究ではほぼ触れられていなかったために見過ごされてきたことを明らかにできた。また手持ち史料の不足も明らかとなり、史料調査によってこれを補った。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を平成26年5月の中東学会で発表する予定である。現在までも様々な研究者からアドバイスをいただいており、これらの批判を踏まえて発表を何度か行う予定である。これによって論点の整理を行い、史料の不備がないかどうかさらに検証して史料調査を行う。その上で年度内に論文投稿を行う予定である。研究の推進方策は、史料を精緻に読むことにつきるが、特に先行研究で重要な史料として扱われてきた史料の成り立ちや、その史料とほかの史料との関連性、時間的、人的つながりに注目して研究を進めることで先行研究で見落とされてきた論点を精緻に描き出したいと考えている。
|