研究課題
本年度は、最大歩行速度と通常歩行速度から定義した機能的予備力が、生活機能低下の有用な指標となるかどうかについて検討した。対象は地域在住の65-94歳の男女449名(平均年齢73.8歳、男性127名、女性322名)である。対象者の通常歩行速度、最大歩行速度を測定し、その差を求めることによって、機能的予備力を定義した。生活機能は老研式活動能力指標によって評価し、10点以下を生活機能低下ありとした。機能的予備力の値から、対象者を3群(high:>0.5 m/s、middle:0.3-0.5 m/s、low:<0.3 m/s)に分け、生活機能低下との関連をロジスティック回帰分析によって検討した。最大歩行速度、通常歩行速度、機能的予備力の平均値±標準偏差は、それぞれ1.85 ± 0.38 m/s、1.38 ± 0.28 m/s、0.47 ± 0.21 m/sであった。生活機能低下を有する者は66名(14.7%)であり、high、middle、low群における該当率はそれぞれ5.9%、15.9%、28.6%であった。生活機能低下に対する調整済みオッズ比は、high群を基準とするとmiddle群では2.5(95%信頼区間:1.1-5.5)、low群では5.3(95%信頼区間:2.2-12.9)であった(P for trend < 0.001)。機能的予備力が低いことは、生活機能の低下と密接に関連していた。機能的予備力を算出することは高齢者の健康状態の評価において、有用かもしれない。
2: おおむね順調に進展している
予定していた解析を終え、学会でも発表できたので、おおむね順調に進展していると考えている。
今後の研究の推進方策は3つある。1つ目は機能的予備力と通常または最大歩行速度単独との予測力を比較し、機能的予備力の妥当性を検討することである。2つ目は縦断分析によって、健康関連アウトカム(ADL障害、要介護認定、総死亡など)との関連を検討することである。3つ目は今後実施予定の介入研究の準備を進めることである。
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