昨年度(平成25年度)からの研究に引き続き、経済で観察される「分布」に焦点を当てて、研究を行った。昨年度は特に実証的に観察される所得分布の持つ規則性について研究を進め、「Income Distribution among Individuals : The effects of economic inter actions」という形で論文として研究成果をまとめたが、研究の中で、企業の成長率の分布というものにも統計的な規則性が存在することが分かり、また所得分布を研究する際に用いていた方法論(確率論的方法)が、その規則性を生み出すメカニズムを分析する上でとても有用であることが分かった。その結果、企業の成長が今までの先行研究で考えられていたような、小さなショックの積み重ねではなく、少ない数の大きなショック(Large jumps)で決定される事が分かった。この研究成果は「Firm Growth Dynamics : The Impor tance of Large Jumps」としてまとめた。 さらに、当初の研究計画にある通り、経済主体間の相互作用の存在がマクロ経済にいかなる影響を及ぼすかついて研究をすすめ、特にミクロレベルの企業の在庫に関する行動が、相互作用が存在するという条件下で、マクロで観察される自発的(内生的)でかつ規則性な在庫循環を生み出すということを示した。この結果は「Endogenous business cycles caused by nonconvex costs and interacti ons」として論文にまとめた。 以上の3本の論文を中心に博士論文としてまとめ、博士号を取得した(「Essays on Stochastic Macroeconomics」東京大学、経済学)。また自身の論文の発表も積極的に行い、国内のみならず、海外(イタリア)での口頭発表も行った。
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