今後の研究の推進方策 |
申請研究では、海馬の情報処理機構における脳波の機能的役割に着目する。これまでの生体動物を用いた知見で、睡眠時または安静時に、行動時と類似の神経活動が再生される「メモリーリプレイ現象」の存在が示唆されている。海馬においても、行動課題中(シータ波発生中)に観察された数個の細胞の時空間的な活動パターンが、その後の睡眠中(リップル波発生中)に時間的に圧縮されながら、再生されることが知られている(Lee and Wilson, Neuron, 2002)。申請者はこれまでの研究をさらに発展させ、微小な電気刺激により、シータ波発生時に人工的に活動させた細胞群の活動をリップル波中において再生させることをスライス標本上で試みる。スライス標本においてメモリーリプレイ現象を人工的に制御することに成功すれば、海馬の神経回路にメモリーリプレイを行うのに十分な機能が内在していることが明らかになるだけでなく、海馬の神経回路が情報処理を行うメカニズムの解明へとつながることが期待される。
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