研究課題
活動したニューロンを数時間後に蛍光ラベルできるArc-dVenusマウスの標本を用い、これに多ニューロン画像法およびパッチクランプ法を適用することで、記憶に関わったニューロンが鋭波発生時に優先的に活動しやすくなり、それによって記憶の再生が起こることを示した。これまで、脳回路ではニューロンの興奮(アクセル)と抑制(ブレーキ)はバランスが一定に保たれていることが常識であったが、記憶にかかわったニューロンは「リップル波」の発生時に、抑制性シグナルに打ち勝つほどアンバランスな(大きな)興奮性シグナルを受け取っていることが判明し、その結果、記憶を再生し、固定することができるようになることが明らかになった。また、これらの現象は長期増強(LTP)を阻害する薬を適用することによって観察されなくなったことから、記憶はLTPによって脳回路に保存されていることも示唆された。以上のような統合的アプローチにより、記憶が脳に刻まれて、それが正確に固定される神経回路メカニズムを解明した。
1: 当初の計画以上に進展している
記憶時に活動したニューロンをラベルする方法の開発に時間がかかることが予想されたが、岐阜大学の山口先生よりArc-dVenusマウスを譲渡いただいたことにより、大幅に時間を短縮できた。
リップル波が不要な記憶の消去を行っている可能性に着目する。リップル波が回路全体に長期抑圧を誘導することを示し、記憶に関わった一部のニューロン間においては長期増強が生じていることをパッチクランプ法により確認する。
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Nature Neuroscience
巻: 17 ページ: 503-505
10.1038/nn.3674
PLoS One
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