研究課題/領域番号 |
13J07838
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
伊藤 千紘 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 羽化リズム / 光同調 / クリプトクロム / 主従2振動体モデル |
研究概要 |
昆虫はある特定の時間帯に蝋から成虫になる(羽化)。羽化直後は、昆虫が水分を失いやすく弱い状態であるので、羽化に適した時間に羽化する必要がある。羽化のタイミングは体内にある内因性の時計機構(概日時計)によって決められ、この概日時計機構には環境の因子(光、温度)に異なる感受性を持っ複数の概日時計が関与することが先行研究で明らかになっている。本研究は、分子遺伝学的手法によってさまざまな遺伝的操作が行えるキイロショウジョウバエを用いて羽化リズムを解析することにより、羽化リズムを制御する複数振動体系の実体を分子レベルで明らかにすることを目指すものである。 本年度は羽化のタイミングを測定する機器のセットアップと、実験に使用する遺伝子組換え体の遺伝的バックグラウンドを均一にするためのもどし交雑に時間を割いた。これらの作業に想定よりも時間がかかったため、本年度は遺伝子組み換え系統を用いた実験は行わなかった。一方、光同調機構については興味深い知見が得られた。視覚系がさまざまなレベルで機能不全になる突然変異系統や、青色光受容分子であるクリプトクロムが機能しない突然変異系統において羽化のタイミングを制御する概日時計機構の光同調能について調べたとろ、クリプトクロムと視覚系の両方が光受容機構に関与することがわかった。クリプトクロムが機能しなくとも、リズムの同調能は野生型とほぼ変わらないのに対し、視覚系が機能しないと羽化の位相が大きく暗期へと移行し、全暗ではリズムの減衰が見られた。つまり、蝋では光への同調にクリプトクロムよりも視覚系を主に使用していると考えられる。成虫ではクリプトクロムが主要な光受容器であると考えられており、発生に伴って、主要な光受容体が変化する可能性が示唆された。この内容には、H25年11月の時間生物学会にて発表した。今後はこの知見をもとに、光と温度に異なる感受性を持っ振動体の実体を遺伝子組換え体を使用した実験で明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験に必要不可欠であったTrikenetics社(アメリカ)の羽化リズム測定装置の納品がかなり遅れたこと、セットアップに時間がかかったことから, その装置を使った実験の開始が遅れたことが原因である。また、想定していたよりも羽化リズムの光への反応性が弱く、実験デザインを変更する必要があったことも要因となった。
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今後の研究の推進方策 |
当初、温度サイクルや明暗サイクルを組み合わせた複雑なレジームでの実験を複数行うことを予定していたが、実験をより単純化して、スピードアップを図る。また、ハエの飼育条件を再考し、実験までのすべての過程を短縮するよう改善したい。
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