本課題では、トマト萎凋病菌とキャベツ萎黄病菌が共通してSIX4遺伝子を持つことに注目、比較ゲノム解析手法を用いて、SIX4遺伝子が共有された経緯を調査した。トマト萎凋病菌では、SIX遺伝子群が小型の染色体に局在すること、また、小型の染色体が水平移動して病原性進化が起こったことが推測されているため、‘SIX4に基づく病原性進化・分化機構’を解明する目的で、両菌の小型染色体の解析を進めた。PFGEゲルからSIX4を含む染色体DNAを分取する方法を開発し、染色体DNAをGAIIxでシーケンシングした。その結果、トマト萎凋病菌およびキャベツ萎黄病菌のSIX4座乗染色体には、複数のSIX遺伝子(病原性に関与すると推定される)が座乗しており、SIX4は、トマト萎凋病菌とキャベツ萎黄病菌で同様の特徴を持つ小型染色体に座乗することが明らかになった。以上から、染色体の水平移動が、SIX4が共有された一因であることが示唆された。本研究において、比較ゲノム解析はWageningen UR(オランダ)にて推進した。 Six4は、トマトの萎凋病抵抗性を誘導する「非病原力」機能を持つことが知られている。そこで本課題では、植物に侵入するが病原性を示さないF. oxysporum株に、遺伝子常発現プロモーターと連結したSIX4遺伝子を導入、トマトへの抵抗性を誘導する生物防除資材として用いることを計画した。SIX4導入株の培養菌体をトマト地際部土壌に灌注した後、Folを接種したところ、SIX4導入株を処理した植物体では発病が減少する傾向が観察されたが、完全な発病の抑制には至らなかった。そこで、ネイティブプロモーターと連結したSIX4を導入した非病原性菌株を作出し、同様の処理を行ったところ、常発現プロモーター株と比較して発病抑制効果の向上が見られた。以上から、Six4によるトマト萎凋病抵抗性の誘導には、SIX4遺伝子の発現時期等が重要な要因であることが示唆された。
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