研究実績の概要 |
本研究の目的は大きく2つある。第1に、アラブ世界におけるメディア産業の実態を包括的に明らかにすることである(産業論)。第2に、再編されつつあるアラブ世界の放送メディアと、各国の政治変動や社会変容との関わりを明らかにすることである(メディアと政治・社会変容の関係)。平成27年度は、カタールとUAEにフィールドワークをおこない、必要文献・資料の購入や関係者への聞き取り調査をおこなった。また、当初の予定通り、研究成果の公開に力を入れた。具体的には、平成27年6月に東京大学で開催された国際シンポジウムと、同年9月に開催されたシンガポール国立大学主催の中東メディアに関する国際シンポジウム(於:Village Hotel Bugis1, Singapore)にて研究報告をおこなった。この2回のシンポジウムへの参加を通じて、国際的に活躍するアラブ・メディアの専門家たちとの意見交換をおこなうことが出来た。また、アラブ諸国(とくにエジプト、ヨルダン、サウジアラビア)の放送メディア産業の最新の状況や放送と通信の融合などをまとめて、その成果をNHK放送文化研究所(編)『データブック世界の放送2016』(NHK出版、2016年2月)(担当箇所「エジプト」「ヨルダン」「サウジアラビア」)と中村覚『サウジアラビアを知るための63章(第2版)』(明石書店、2015年7月)(担当ヶ所「情報社会に応えるソフト・パワー戦略――衛星テレビ、新聞、SNS、IT機器の普及」)として公開した。また「ジャスミン革命」を前後とするチュニジアのメディア状況の変化を論文にまとめて、Mediterraenan Reviewに投稿し、掲載された。
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