今年度は、近年のモダニズム・アヴァンギャルド研究を整理すると共に、パヴェーゼやヴィットリーニなど1930年代から1940年代にかけてアメリカ文学の翻訳に携わったイタリアの作家について調査を進め、その評論や小説作品を分析した。 2015年7月半ばから10月初めにかけては、資料調査と学会発表のため、アメリカ合衆国とイタリアに渡航した。アメリカでは主にモダニズム関係の資料を収集し、アメリカとイタリアにおけるモダニズム研究の特徴を分析した。イタリアでは主に、パヴェーゼやヴィットリーニ、モンターレ、モラヴィアなど、ファシズム政権下でアメリカ文学の翻訳活動に携わった作家たちに関する資料を収集した。9月には、ナポリ東洋大学にて、AISNA(Italian Association for North American Studies)の第23回研究集会に参加した。この研究集会では、モダニズムに関する近年の議論と関連づける形で、パヴェーゼやヴィットリーニのアメリカ文学論についての自らの分析を発表した。さらに、イタリアとアメリカとの文化的関係をテーマとして含む複数のセッションに聴衆として参加した。 帰国後は、イタリアで収集した資料を精読・分析すると共に、歴史的アヴァンギャルドについても調査を進めた。パヴェーゼやヴィットリーニのアメリカ文学論や映画論の特徴を歴史的アヴァンギャルドの思想や芸術論と比較し、ファシズム政権下のイタリアにおけるアメリカ文化の受容とアヴァンギャルドとの関係性について考察した。
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