研究概要 |
本研究では, 中国の低開発地域や資源の限られた地域, 日本の農村地域における農地・水資源と資源利用を比較し, 効率的かつ持続可能な農業生産, 土地利用のあり方を示すことを目的としている. 平成25年10月8日から10月16日, 及び, 平成26年3月16日から3月24日にかけて, 中国甘粛省において海外学術調査を行った. その中で, 中国科学院及び張掖市政府の協力のもと, 張掖市各県における灌漑概区及び農村で, 人口統計や農業経営, 水利制度に関する聞き取り調査やリモートセンシング・GISに関連したデータ取得を行った. 合わせて, 中国雲南省や甘粛省の衛星画像を取得, リモートセンシング解析を行い, 1974年以降の雲南省南部の土地利用を改めて推計し, 甘粛省張掖市の1990年以降の土地利用を明らかにした. 上述の聞き取り調査や社会経済統計との結合を行い, 対象地における土地利用・社会経済データ・インフラ等の総合的な地理データベースを作成した. このデータベースを用いることで, 特に中国では定量的に分析されてこなかった農業生産・土地利用の定量的な分析やシミュレーションが可能である. 現在, 空間計量経済学の手法も用い分析を行っており, 2014年3月には, 中国科学院で本研究に関する意見交換を行った. また, 申請者が昨年度まで参加した基盤研究(B)「中国農業における土地・水資源の利用・管理に関するメカニズムデザイン」のデータを用い, 中国雲南省の農村において, 各農家の移動経路や圃場の生産量, 生産条件を明らかにした. 圃場の周縁効果や地理的な効果の計測や, 土地分配に関する分析を行っている. 日本国内においては, リモートセンシングや国勢調査, 農業集落カードのデータを組み合わせ, 地理的・物理的な特性から, 各種統計・政策を組み込んだGISデータセットを作成し, 空間統計を用いて考察, 論文投稿し, 国際誌に掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は, 海外学術調査において, 当初の期待を上回る多くのデータを取得できた. 海外における調査・研究に力を入れたこともあり, 国内での学術調査は, 先行研究整理と日程調整が中心であったが, GIS・リモートセンシングデータを整備し, 研究に必要なデータベースを作成した. 論文発表に関し, 国際誌に複数の論文が掲載されるなど, 比較的多くの実績を残すことができた. データの経済分析やモデルの推敲, 博士論文の執筆等も概ね計画通り進行している.
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