研究概要 |
本研究の目的は, ヒトデなどの棘皮動物が有する管足を利用した新しい移動方法により, 体内で臓器の隙間をかき分けるように移動するマイクロ体内ロボットを開発することである. この移動方法を用いることで, 磁場を用いた従来の移動方法では実現が難しい生体組織を傷つけない移動と容易な制御による一定の場所への停留が可能となる. このロボットを利用することで, 体内での診断や治療を行うことが出来れば, 病変の早期発見や効果的な治療が期待できる. 管足は細長い管状の器官であり, 筒内部に液体を出し入れする瓶嚢, 停留するための吸盤がその両端に接続された柔軟な構造であり, 液体の移送により移動することが可能である. 平成25年度は移動するために重要となる送液機能と変形機能を開発した. 送液機能は管足内に送る液体を蓄えるタンク部と, タンク部を圧縮変形させることで液体を送り出す圧縮部から構成した. これら2つはポリアセタール樹脂で製作した鋳型にシリコーン樹脂を流し込む鋳造方式で製作し, 圧縮部には体内ロボットの制御回路から電気的に制御できるように形状記憶合金の1種であり, 通電によって変形するバイオメタルファイバーを利用した. これにより通電時間に対して線形に変形し, タンク部を圧縮させることができた. 変形機能は鋳造方式で製作した厚みの異なる2枚のシリコーンシートを組み合わせて中空構造とすることで製作した. シートの厚みによって, 中空構造の内部に液体を満たした時の変形量が異なることを利用して1方向への屈曲変形を実現し, その変形量と発生力を注水量に対して線形に変化させることができた. これら2つの機能を組み合わせることで管足での移動において最も重要となる液体の移送で変形する管足アクチュエータを実現することができる. 管足アクチュエータを体内ロボットに複数個配置して, それぞれを規則的に変形させることで, 棘皮動物と同様に移動が可能となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度には管足の変形機能, 瓶嚢の送液機能, 吸盤の吸着機能を一体化させた管足システムを開発し, 生体組織として鳥の肝臓上で移動させることが目標であったが, 達成することが出来なかった. その理由は小型, 柔軟構造での送液機能の開発に時間を要したためである。
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今後の研究の推進方策 |
送液機能の開発に時間を要したことから, 当初の研究計画に対して遅れが発生している. 平成26年度では, まず遅れを取り戻すために早急に吸着機能を開発することを目標とする. 開発方法は送液機能や変形機能と同様に鋳造方式によるシリコーン樹脂の成形である. そして, 平成25年度の研究成果である変形機能, 送液機能と一体化させることで管足システムとしての移動を実現させる. また, 管足システムによる自由な移動を実現するためには, 体内ロボットへの取り付け方と動かし方が重要である. そこで吸着機能の開発と同時に, 管足システムの動かし方も検討する.
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