本研究課題の目的は、縦型素子である有機EL素子のEL発光に至るキャリヤ挙動に関して、計測技術が確立されていないため実態を明らかにすることは困難であり、まだ十分に議論がなされていない点であるEL発光面内方向での電界分布や界面蓄積電荷分布、EL発光強度分布について電界誘起光第二次高調波発生測定法を用いて評価を行うことである。はじめに、二層積層有機EL素子(IZO/alpha-NPD(150 nm)/Alq3(50 nm)/Al)のalpha-NPD層の膜厚方向の電界を評価可能とするために新たな軸対称偏光パルスレーザーによる顕微電界誘起光第二次高調波発生測定システムの構築を行った。新たな測定系を用いて、有機膜厚方向の電界を評価可能か検証するために単層有機EL素子としてIZO/ alpha-NPD(200 nm)/Alを用いて実験を行った。実際に、外部電圧に対してalpha-NPD層から生じるSH光強度を測定した結果から新たに構築した軸対称偏光パルスレーザーによる顕微電界誘起光第二次高調波発生測定システムによって有機膜厚方向の電界を評価可能なことを実証した。次に、二層積層有機EL素子のEL発光に至る面内方向でのキャリヤ挙動を明らかにするために、まずは、発光面について一次元的にレーザーを走査することでalpha-NPD層に生じている電界分布およびalpha-NPD/Alq3界面に形成される界面蓄積電荷量分布を評価した。また、EL発光強度分布を測定した。そして、EL発光面内でのEL発光に至るキャリヤ挙動についてMaxwell-Wagner効果による界面電荷形成モデルに基づき考察した。その結果、二層有機EL素子の発光面内の一次元方向での界面蓄積電荷量分布とEL発光強度分布に相関性が有り、正孔による界面蓄積電荷が多い個所でEL発光強度が強くなることを示すことができた。
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