研究課題/領域番号 |
13J08069
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
藤井 叙人 関西学院大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2013-04-26 – 2015-03-31
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キーワード | 機械学習 / 強化学習 / 経路探索 / ゲームAI / 人間らしさ / 生物学的制約 |
研究実績の概要 |
「人間の熟達者に勝利する」ことを目標としたゲームAIの振る舞いは,過度に最適化されており,人間にとっては機械的に映る.このAIを人間プレイヤの代替として扱った場合,ゲームにおけるエンタテインメント性は大きく欠落してしまう.本研究では,「人間にとって親しみやすいAI」という視点から,ゲームAIの「人間らしい」振る舞いや戦略を自動的に獲得する方法論を構築し,その有用性の評価することが主目的である. 本年度は,人間にとって親しみやすいAIの第一段階として,「人間プレイヤなら誰しもがもつ制約」を模倣するAIの実現を目指した.機械と人間の差異として,人間が生得的にもつ特徴や性質から生じる制約に着眼し,それを『生物学的制約』として機械学習の枠組みに導入した.生物学的制約は挙げればきりが無いが,まずは,身体的な制約として“ゆらぎ”,“遅れ”,“疲れ”を定義した.人間の生物学的制約は,開発者のヒューリスティックに依存しないため,汎用的な振る舞い獲得の手法として構築が可能である.振る舞い獲得の対象としては,アクションゲーム“Infinite Mario Bros.”(ランダムに生成されるステージを制限時間内に攻略する,「スーパーマリオワールド」のようなアクションゲーム.)を採用し,自動的に獲得された振る舞いが人間らしいかどうかを主観評価実験により検証した. その結果,生物学的制約を強化学習手法,経路探索手法に導入することで,多数の人間プレイヤにとってより『人間らしい』と解されるゲームキャラクタを自動的に構成できることが示された.主観評価実験では,生物学的制約を導入したゲームキャラクタが,導入していないゲームキャラクタよりも人間らしい振る舞いを獲得できていることを示した.さらに,生物学的制約を導入したゲームキャラクタは,人間プレイヤよりも人間らしいと評価された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
人間にとって親しみやすいAIの第一段階として,人間が生得的にもつ『生物学的制約』を定義し,強化学習と経路探索の枠組みに導入することで,人間らしい振る舞いを表出するゲームAIの構築に成功している.また,主観評価実験を実施し,本研究のゲームAIの振る舞いが人間らしいと解釈されること,また,人間プレイヤよりも人間らしいと評価されることが示されており,非常に興味深い結果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
人間にとって親しみやすいAIが持つべき要素の一つとして,誰しもが生得的に持つ『生物学的制約』が重要であることは示されたが,人間プレイヤの再現にはほど遠いのが現状である.今後は,ゲームAIの振る舞いを人間らしくする上で必要となる要素を検討し,機械学習の枠組みへの導入を目指す. また,「人間らしさ」の評価は実験参加者の主観に依るところが大きいため,その評価基準は人によって異なるのではないか,という疑問もある.実験参加者を,ゲームの熟練度やプレイスタイルにより群分けすることで,実験参加者間の評価基準の差異を検証する必要がある.
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