研究課題/領域番号 |
13J08099
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
則竹 香菜子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | エタノール / アポトーシス / 心筋細胞 / ギャップ結合 / コネキシン |
研究概要 |
本研究は、アルコールの主成分であるエタノールの心筋細胞への毒性を評価し、アルコール性心筋障害発症の分子機構を明らかにすることを目的としている。 マウス心房筋由来細胞株のHL-1細胞を用いて心筋細胞毒性を評価した結果、高濃度のエタノールでアポトーシスが誘導されることを確認した。細胞内の恒常性維持を担うオートファジーの抑制がアポトーシス誘導に関与するとの報告があるが、エタノールによるオートファジーの亢進・抑制は認めなかった。 心筋細胞は隣接する細胞間でギャップ結合チャネルを形成し、その中をイオンやシグナル分子が通過することで興奮伝導を調節している。エタノールにより、ギャップ結合の構成タンパク質であるコネキシン43(Cx43)の発現が低下することを確認した。リアルタイムPCR法によりエタノール曝露初期ではCx43遺伝子の発現抑制を認めた。しかしエタノール曝露後期では、Cx43タンパク質の分解促進が誘導されることが示唆された。Cx43の分解には、エンドソーム/リソソーム系、ユビキチン/プロテアソーム系、オートファジーなどのタンパク質分解系が関与していると考えられている。GFP-Cx43をHL-1細胞に発現させ蛍光観察した結果、エタノールによりCx43が細胞膜から細胞質へと取り込まれている様子が観察された。また、細胞質に局在するCx43はリソソームマーカーLAMP1との局在の一致を確認した。今回の結果から、エタノールによるCx43の発現低下によりギャップ結合による細胞間情報伝達に異常が起き、心収縮障害を引き起こすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エタノールにより心筋細胞がアポトーシスを起こすことを確認した。また、ギャップ結合構成タンパク質のコネキシン43の分解が促進されていることを示唆した。エタノールによる心筋障害のメカニズムについて、当初予測していたオートファジーの関連以外の新たな知見を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
(1)エタノールによるコネキシン43分解のメカニズムを解明する。 (2)エタノールによるアポトーシス誘導とCx43発現低下との関連について検討する。 (3)培養心筋細胞で得られた結果をもとに、動物個体に対する影響を検討する。
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